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2003/04/01

森 太三展

「海の向こうにある標」


art178_04_1「sea,2003」細部
2cm×2cmに切った紙や写真 が赤く染められている。


■ふたつの展示空間には、それぞれ過去と未来を表現したインスタレーション。どちらも新聞、レシートなどの古紙や折り紙といった誰の目にも見慣れた素材が用いられているので、そこには観客自身の記憶やイメージを重ねやすい。

■2cm角に切り取られた新聞紙や写真や雑誌が赤く染められて、浅い箱状の容器に敷き詰められた作品「sea,2003」。真っ赤に染まったものや、染まり難くうすいピンクになったものと、染まり方はまちまち。しゃがんでみると、たくさんの文章の断片が目にとまる。乾いた質感のそれらは、きれぎれにしか思い出せない記憶の数々が塵となって積もったかのようだ。

■もうひとつのスペースの入口に立つと私の目の高さからは、水色の壁の上に白い二つの三角形が載っているのが見えた。手前に置かれていた脚立に登ってみる。壁の上には折り紙で折られた白、銀、黄色の三角形が整然と並べられ、奥に向かって放射状の列になっている。少し高いところに立ってはじめて明らかになった光景に、山、遠くの景色といった言葉を連想する。

■森さんの実家の窓からは海の向こうに淡路島が見えるという。それは展示のひらめきにもなったそうだ。赤く染まった紙片を集積した容器は少しいびつで、一方の壁の方に寄せて設置されているので、どうしても広い側へと足が向く。その先に折り紙の「future,2003」がある。海の先に目線をのばせば島が確認できるのと同じように、会場は「過去」から「未来」への導線が意識されている。

■壁の上に見える白い三角も脚立にのぼることを誘うような標になって、そこに何かがあると示す。そんなしつらいに誘導されながらも、観る人は展示空間の「現在」に身をおいてそれぞれの過去と未来に思いを巡らすことができるだろう。物語の最後のページを読み終わり、それからどうなるかと続きを想像する読者のように。


森 太三展 - FUTURE -
2003年4月1日(火)~4月13日(日)
gallery coco
京都市東山区三条通神宮道東入 ホリホックビル2F
(京阪「三条」駅下車東へ徒歩15分。又は地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口より東へ徒歩5分)
12:00~19:00(最終日は18:00まで)
月休
TEL.075-752-9081

words:酒井千穂

art178_04_2「SEA2003」


art178_04_3「future2003」
展示室入り口の光景


art178_04_4「future2003」
この作品は用意されている脚立にのぼって見る


art178_04_5「future2003」


art178_04_6「future2003」
脚立に登ると黄、銀、白の三角形の折り紙の列が出現する。

2003-04-01 at 08:04 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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