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2003/04/25

福井江太郎展

「新境地のダチョウ」


art181_02_1壁面には大作「ハムレット、ホレイショーそしてローゼンクランツとギルテンスターン」(207×270cm)を展示


■ダチョウを描く日本画家、では語りきれない福井江太郎さん。「舞台」をキーにした彼の新境地を目撃した。

■タイトルのTheatreとは劇場のこと。福井さんは長年、それこそダチョウを描く前から舞台の仕事に関わってきた。美術はもちろん、演出をしたり、時には脚本や構成も手掛ける。一方で精緻な日本画の世界に浸かり、人や魚を描くものの、1996年からは水を得た魚のようにダチョウに入魂してきた。

■今回のダチョウは今までとちょっと違っていた。感覚的な線が多用され、ダチョウの表情は動物を超えた人間そのものだった。作品につけられたタイトル「ロミオとジュリエット」のように、すべて芝居の登場人物をダチョウに置き換えて描いていたのだ。壁に並べられた小品は、想像力あふれる芝居の場面描写なのである。

■部屋の窓際から見上げる吹き抜け風の壁面には、今回の目玉ともいえる大作があった。4羽のダチョウの競演姿。舞台のような空気を感じ、気分も高まってくる。そして小品の対面には、5点シリーズの風変わりなダチョウがいた。たらした墨の流跡を活かして描いたらしい。弓を引いている者、ダンスをしている者、面白いほど素敵な造形が見られる。

■なぜダチョウか?という質問はイヤになるほど受けているそうだが、かつて聞いた時には「好きだから」という単純明快なものだった。ダチョウには描きたくなる底知れぬ魅力があるのだろう。 それは今でも絵をみれば一目瞭然で、充分な愛情を見て取れる。

■8割が売約済みという快挙。マンションという生活に近い展示空間も効いているのかもしれないが、何より欲しいと思わせる粒選りの作品揃いだった。

福井江太郎展[THEATRE]
2003年4月25日(金)~5月31日(土)
art cocoon
東京都世田谷区用賀4-11-17 グリーンハウスNo.6-6301
(東急田園都市線用賀駅より徒歩1分)
14:00~20:00  月火休
入場無料
TEL.03-3700-4247


art181_02_2リズミカルに並べられた小品


art181_02_3正面を向いたダチョウ画「三人姉妹」(チェーホフ作)


art181_02_4三人の悪魔」(左)と「ハムレットと父の亡霊」(右)


art181_02_5「オフィーリアの死」


art181_02_6水墨画の5点シリーズ「Series Draw #001~005」


2003-04-25 at 02:10 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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