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2003/04/08

清水寛子&松本力コラボレーション展

「魂のノラ」


art178_01_1好きな面を切って付けよう。仮面の下の表情は……。


■利害ではなく、世界観を共有することで人は動けるものだと再確認できた。そもそもグループ展やコラボレーション展は、共通点も相違点もある人や作品同士が、新しい世界観をつくりあげるもの。しかし、現状では、よく見ると「個展が複数ある」に留まっているものが多いように思う。

■清水は、熊のような匿名のキャラクターを用いた影絵のアニメ-ションを空間インスタレ-ションで展開し、顔のない拠り所のなさと、想像力の喚起の両面性をユーモラスに見せてきた作家だ。一方、松本は、色彩や描き味が独特な、動物や幽霊などの自作のキャラクターを動かす。動物が風景に変身していくような展開も、パラパラマンガからはじまったアニメ-ションと、モーフィングという特性を生かした、有機的な表現だ。オルガノラウンジの音楽も相まって、松本の絵には、ケンカは強くないけど、拳は握りしめているような、ちょっとした哀しさと熱さとのんびりさがある。

■1階では、松本キャラの面をつけ、不在の椅子に座って撮影することで、この世界の住人になれる。それは、2階の松本のアニメ-ションで、さまざまなキャラクターが次々と椅子に座っていくシーンがヒントだ。

■松本のアニメと背中合わせに、清水の影絵のインスタレ-ション。松本キャラの仮面をあれこれつけて、なかなか自分の本当の顔を探し出せない様子が続く。これまででは、影に想像する表情が、見る者の鏡の役割をしてきたと思うが、松本キャラと、1階の変身の介入で、さらに多層的になった。他方では、松本のポジティブさの裏にある影の部分を、清水キャラが背中合わせに解放している。もうひとつの共作では、新しいフィールドに、時間が動き出している。

■1階の空間遣いが少しもったいない気がするが、初企画の深澤千絵を含め、相手を尊重しつつイタズラ心で各自の世界を広げているのがピースフル。タイトルの「NORASCOPE」は、松本は野良犬のように開放的な、清水は無所属という意味合いの「ノラ」から見た景色だそうだ。本当の野良人は、椅子に座ることも譲ることもできる。(イプセンの『人形の家』で自立する女性の名前もノラ)

清水寛子&松本力コラボレーション展
「NORASCOPE」
2003年4月8日(火)~20日(日)
ラ・ガルリ・デ・ナカムラ
東京都新宿区早稲田鶴巻町574富陽ビル 
(江戸川橋駅1b出口より新目白通りを早稲田方向へ、喫茶「レモン」左折。徒歩5分)
17:00~21:00
月休
TEL.03-3268-3309
※4/11(金)19:30~NORASCOPE+オルガノラウンジ
VJパフォーマンス(500円)

※このギャラリーは昭和30年代のビルを改装した新スポット。3階はカフェもあるアップリンク・ギャラリー
向かいに「ナイキ漫画館」あり。

words:白坂ゆり

art178_01_2清水寛子(左)と松本力(右)のこれまでのオムニバス


art178_01_3


art178_01_4松本力のアニメーション


art178_01_5


art178_01_6清水寛子のアニメーション


art178_01_7外から投影しているのに内側にいるよう。

2003-04-08 at 04:41 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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