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2003/02/10
横澤典展
「余白の眺め」
展示風景
■考えが煮詰まったときには、山の中腹辺りの視点から物事を俯瞰してみる。途中過程でのそれぞれの関係性と自分の立ち位置、つまり全体と部分が見直せるから。あまり登り詰めても、見えなくなってしまう。
■横澤典は、空中飛行ではなく、地に足の付いた地点から街を俯瞰する写真を撮っている。今回は、朝の雪景色と夜景の写真が向かい合って展示されていた。部屋を暗くし、スポットライトで街の表面を浮び上がらせている。
■降り積もった雪には、全体を白く覆い隠すイメージが浮かぶ。しかし、マンションなどが建ち並ぶ市街地では、屋根の白い面と地面が余白をつくっている感じだ。夜景では、闇が余白となる。画面の隅々までが等価に撮られ、なおかつ建物の配列などで画面が構成されている。大雪が降った翌朝の光は美しい。最適の瞬間を捉えるまで、彼は待つ。カメラはコントロールできる領域が少ないが、移動するとか待つとかいった人間の行動で、可能な領域を広げることもできる。
■この土地には何の由縁もない。しかし、何度も通って撮るうちに、帰省するような感覚が湧いてきたという。写真を見ていると、撮影者が何を考えて撮ったのか眼差しが気になる。それは、街を見守る番人のようでもあり、街を手中に治める為政者のようでもある。彼自身は「内面性も鏡の役割も両方備えた写真でありたい」と言う。見る者は、俯瞰すると同時にその光景のなかに自分を投入する。「断片しか写し得ないことが写真の限界であるとしても、他人事であった場所や物事を、ある意味暴力的に「ここ」に置くことで、地続きであることを意識させることはできる。最小の断片で最大の世界を見せたい」と言う。
■写真は、撮った瞬間にそのものが死んで(止まって)、時間が流れない。しかし、「あたかも人が住んでいるかのような映像(写真)がつくりたい」というのが横澤のめざすところ。ポジティブな温度が感じられるのは、街というものに、人間の知と力の営みを感じるからかもしれない。人ひとり見えないのが不穏にも思えるが、動きだす間際とも見える。夜景では、ドリッピングのような灯りの軌跡が、暗箱から光をキャッチするピンホールカメラを思い出させる。歴史にはまだ白いページがある。
横澤典(つかさ)展"On White"
2003年2月10日(月)〜3月8日(土)
ベイスギャラリー
東京都中央区京橋3-7-4近代ビル1F
(京橋駅1番出口より三井住友銀行左折。「美々卯」前)
11:00〜19:00
日休
TEL.03-3567-8543
words:白坂ゆり
「余白にて/On White #1」2002年
「余白にて/On White #2」2003年
「余白にて/On White #4」2003年
「Approach Lights #1」2002年
近付いてディテールを見ると
2003-02-10 at 12:06 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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