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2003/02/10

山下律子展

「モチーフと技法のミスマッチ」

 
art175_02_1会場風景


■一見、油絵には見えない。会場に入っても作品に顔を寄せるまでは気づかない。それくらい深く克明な線で描かれたポップなイラスト画。それにしても味のある線だなあと見入っていると、白絵の具を厚塗したキャンバスをニードルのようなもので引っ掻いて溝をつくり、色を詰めたものだと判明した。

■凝った技法で描いているのは、スキンヘッドのカップルが街を闊歩したり、部屋でくつろいでいる場面。異国世界のワンシーンのようでいて密着感のあるリアリティがただよう。実はこのカップルのモデルは作家本人と友人のおじいさん。2ケ月ほどヨーロッパを周遊した際に、あちこち訪れた日々の記録のようである。美術館、駅、動物園などなど観光先で見せる彼等のポーズがとても決まってる。

■1点だけサイズの大きい真っ白い絵があった。白い下地を削り黒い絵の具を塗り込めない前の状態であえて完成にした作品。山下さんはいっさい下書きをしないそうで、いつもぶっつけ本番である。白い画面を削っていく際、その線が見えなくて本当に大変な作業だそうだが、悪戦苦闘の末にできた画面は溝が少しの陰影をつくり、目が慣れるほどに線描が見えてくる魅力的なものだった。

■こんなにも線を刻むことを好みながらも、エッチング等の版画に行かなかったのはなぜか。ふとそんな疑問が湧いてくる。「油絵にこだわりたいんです。こういう重厚な技法でポップな作風を描くことで、気軽に感じてもらえる作品をつくりたいなって。」

■彼女のもうひとつのこだわりはスクエアの画面。45.5×45.5cm。ずっとこのサイズで描いてきたそうだ。これより大きくても小さくてもだめらしい。真四角で切り取られた世界には特別な時間が流れている気がした。

山下律子展
2003年2月10日(月)~3月8日(土)
ギャラリー北村
東京都港区南青山5-1-25 北村ビル102
( 地下鉄「表参道」駅B3またはB4出口より徒歩3分)
11:00~19:00(日休)最終日は~17:00
入場無料
TEL. 03-3499-0867

words:斎藤博美

art175_02_2「Igor」


art175_02_3「The Walrus Collection」


art175_02_4「Afghanistan Bananastan」の部分アップ


art175_02_5この1点だけ真っ白い。「Round-a-bout」


art175_02_6「Percy's room」

2003-02-10 at 12:12 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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