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2002/12/16
佐藤万絵子展
「絵と人。絵の人」
12月19日
■公開制作をしている作家がいると聞いて出かけた。どんな作家でも制作中は真剣だし、ひたむきさで取り上げるのはフェアではないかもしれない。しかし佐藤の場合は、内も外も見えていて、かつ湧き出た問題に向かっている。画廊の入り口を境に、中が絵の内側、外が絵の外側とし、外圧を受けながらいかに描くかを自身に課していた。公開することも外圧のひとつ。繭が動くように、絵の内部に潜って描く姿は迫力だが、その振動で枠が倒れることもある。その外部の音を聴き、そのたびに直すことも必要なことだという。壁に守られ、内側だけで描いてしまわないように。
■かつて、自分がつくったものが(料理なども)目にできず、絵が描けなくなったときがあったという。そんな心身であっても生理が訪れ、その赤の美しさに、身体が先に描いていると感じたのだそうだ。そこから、紙袋に手を入れて見ないで描くリハビリがはじまった。見なくても絵を描いている感じは伝わる。ようやく絵を見たいと思えたとき、全部開けてキャンバスの上に置き、写真を撮った。そのとき絵自身が発光する感じと、翳りのなかで「もの」に戻っていく両方を感じた。
■また、どんなにランダムでも四角い中に描いているには違いない。四角い紙に描いてはみ出した部分をすくいとるにはどうしたらいいのか、自分にぴったりの絵の皿をつくりたい。それには、壁にかけることなど、抵抗を感じる問題に取り組みながら描き続けることだと思ったのだそうだ。
■翌日は、「中だと思っていたここも外なのだ」と気づき、外も自分でつくりたいと木枠を壊していた。絵をワイヤーで吊るした。途中、電流が走ったように紙袋を並べはじめ、通路が開けた。紙をまるめて枠を立たせていく。天井からも絵を吊るし、その光を背中に受けて描く彼女がいた。実はこの日、古いビルの地下、夜の静けさの中で2時間半その様子を見ていた。その先に起こることが見たくて帰るタイミングを失ったのだが、不思議と彼女のバイオリズムが伝わって、完成までの時間が見えて安心もしていた。張り込みみたい。
■こうしている間にも絵は生まれ、変わり続けているのだろう。人はなぜこんな思いをして、絵を描くのだろうか。こんな姿を見ると、この仕事からまだ引き下がれないなと思う。
佐藤万絵子展
「in the picture/out of the picture」
2002年12月16日(月)〜12月28日(土)
space kobo & tomo
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビルB1F
(地下鉄銀座一丁目駅出口、ドトール先)
12:00-19:00(最終日〜17:00)
TEL.03-3538-3250
words:白坂ゆり
紙のなかにもぐって描いている
12月20日。中の絵と呼応して、紙袋の中の絵が赤く光っている
紙袋の中
オイルバーで描くのは、固体が削られて絵に変わっていく姿が確認できるからだという
この日の完成状態
2002-12-16 at 02:41 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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