2002/12/21
クロード・レヴェック展
「インスタレーションの王道」
まず入るとドローイングのようなネオン管が目に入る
■インスタレーション(空間展示)という言葉はけっこう安易に用いられている。絵画を壁に並べてインスタレーションなんです、と主張するアーティストもいたりして、空間全体で見せたいわけねと、こちらもそのまま受け止めてきた。それだけに水戸芸術館で始まったクロード・レヴェック氏の展示は私にとって青天の霹靂だった。館内の複数の展示室全体でひとつの作品を作り上げているのだが、これぞインスタレーション!と感動するものだった。
■今回はいつもの出口側から入る導線をとっていて、入ってしまえば順路は存在しない。入館者はひとつの巨大な作品を眺めまわすようにいくつかの部屋を行き来することになる。ドローイングのような丸いネオン館が設置された部屋を除けば、それ以外の空間は展示室ごと全て左右対称になっているという。映像の光が左右両極から空間を浮かび上がらせる。一見抽象的な画面は自動車のヘッドライトを写したものであり、場内に響きわたるサウンドも自動車の走行音だ。映像を映す2枚のスクリーンの隙間に鏡を設置し、どこまでも奥行きを強調する。
■シンメトリーの拠点はコードを張り巡らせたブラックライトの部屋だった。床はジャリ敷き、天井の中央部に鏡を使って上空への広がりをもたせている。ジャリ音を立てながら幻想的に光るコードをくぐって中央へ。そしてこの場所こそ垂直・水平に突き抜けていくベクトルの起点なのだと察した。不思議なのは、展示室の配置が頭に入っている会場のはずなのに、別空間のように思えてならなかったことだ。レヴェック氏の空間とはこういうものなのか…。
■レヴェック氏(1953年フランス生まれ)はかつてディスプレイの仕事をしていたという。「見せる(魅せる)」ことへの強い意志がオーラのように出ているのはそのためか。彼は1982年のパリ青年ビエンナーレへの出品をきっかけにアーティストに転身、以来、国際展や欧米での展覧会を中心に活躍してきた。同展は日本初の大々的な発表であり、「double manege」(直訳=二重の回転木馬)というアレゴリーをこめたタイトルで展開している。
■「観客は気に入るか怒るかどちらかでしょう」と担当学芸員の窪田氏が語るように、両極端の反応が出てきそうな展覧会。ぜひ水戸芸術館の空間を熟知している人にこそ見てほしい。
クロード・レヴェック展
2002年12月21日(土)~2003年3月9日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー
茨城県水戸市五軒町1-6-8
(JR「水戸」駅より北口バスターミナル4-7番から「泉町1丁目」下車、徒歩3分)
9:30~18:00(月休、12/28-1/3、1/14休)
入場一般800円、中学生以下・65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの人は無料
TEL. 029-227-8111
words:斎藤博美
展示室間の奥行きが見えることがポイント
両極から空間を浮かび上がらせる映像
空間の起点となるブラックライトの部屋
点滅するネオン管
こちらがクロード・レヴェック氏
(※写真はすべて水戸芸術館現代美術ギャラリーで撮影)
2002-12-21 at 02:47 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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