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2002/10/13

関本幸治展

「2人は光のベールに包まれて」


art166_04_1画廊の正面の壁にある作品


■大阪市内の2つの画廊で関本幸治の個展が開かれている。"Romeo and," ",and Jul iet"(「ロミオと」「とジュリエット」)というタイトルは言わずもがなシェークスピアの悲恋の物語からとっている。少し距離のある2つの画廊だが、その2会場をもって展覧会は成立している。

■"Romeo and,"展の画廊の壁を優雅に飾る白いレースのカーテン。カーテンと床に羽毛が飛び散り点在する、そこには壁に頭をもたげる人の姿。白いカーテンに一つだけ赤い小さな羽毛がカーテンに染みのようについているのに視線が釘付けになる。作品のタイトルを読むとさらに深くその世界へと意識を奪われてゆく。

■光と鏡の効果をうまく利用して描いてゆく関本の世界は、しっとりとした人肌が伝わってくる。写真作品とは異なるものと位置づけ、フォト・ドゥローイングと自身の作品を呼ぶ。いくつもの場所や時間の違うシーンを描写したそれらから、私たちはいつの間にかスト-リーを頭に紡ぎ出す。

■以前はコレクションしているアンティークの人形を用い、服を作って着せたり、メイクををほどこす等してモティーフとしていた。だが、現在は人形も彼自身が作っているという。細部へのこだわりは、例えば人形が手をつく壁紙のクロスにまで行き届いている。レリーフの女性をよく見ると長いまつ毛がすっと生えている。

■Studio Jの"Romeo and,"では左のPascalがカーテンに隠れている展示が、オン・ギャラリーの",and Juliet"の空間では右のElsaがカーテンに隠れている「pascal and,,and Elsa」。といった具合に、一つの会場を観ただけの時と、2会場を見た後では、きっと作品に対する感想も変化があるだろう。全貌を確認したいあなたは是非とも両会場へ足を運んで欲しい。


関本幸治展 "Romeo and,"
2002年10月12日(土)~11月8日(金)
Studio J
大阪市西区新町3-14-8
(地下鉄千日前線・長堀鶴見緑地線「西長堀駅」1番出口すぐ)
12:00~19:00
日月祝休
Tel.06-6110-8508

関本幸治展 ",and Juliet"
2002年10月13日(日)~11月30日(土)
オン・ギャラリー
大阪市東淀川区淡路5-8-23-101
(阪急京都線「淡路駅」西口より4分)
12:00~18:00
火水木休
Tel.06-6815-3841

words:原久子

art166_04_2右)「pascal and,
,and Elsa」


art166_04_3右)「額と壁から何度となく響く鈍く重い音
天使達が舞降り足元でやさしく微笑む
そのゆるんだ口元が私の胸をつまらせる
耳元から虫を誘う甘い香りがただよう
壁にかすれて広がってゆく赤い血痕と白い意識
媚薬の分子がたちこめる中で」
(2002)


art166_04_4白いカーテンには羽毛がからまっている。


art166_04_5「顔のないタクシー運転手の後ろで
プラム色の口に差しなおす
バッグの中にしまいこむ時
少しの揺れに口紅をすべらせた
私は視線を天井に向けて
前の座席下辺りに手を入れ
陰の中の形を触れながら
それを拾い上げると
別の口紅があった」
(2002)


art166_04_6「私の愛らしい罪」(2002)


art166_04_7「私の愛らしい罪」(2002)


art166_04_8「体温を放出する代わりにひんやりと
淡い色調のリノリウムと同化しはじめる
私の心に写った映像は霧に乱反射して
光のきしむ音だけが迷宮の出口までの道標となる」
(2002)

2002-10-13 at 12:55 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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