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2002/10/22

浅見貴子展

「絶妙な墨絵画」


art167_02_1庭の見える開放的なギャラリー。作品は「Matsu 3」


■どんな絵画を良しとするか、それは見る人次第だけれど、私個人は雰囲気の良し悪しがたぶん物差しになっている。具象も抽象も関係ないし、タッチも色も問わない。ただ、画面にただよう言葉にはできない雰囲気に注目してしまう。

■浅見貴子さんは数年前から見てきた作家のひとり。一貫して和紙に墨で描いたモノクローム作品を制作している。ぼかし、にじみを使って、白と黒だけで構成された画面は、重厚さとすがすがしさを同時に感じさせるくらい変容の幅を持っている。

■うねりのような抽象に近い作品を発表していた頃から気になっていた。が、なんとなく自分の中で咀嚼できずにいた。その後、浅見さんは楕円形の筆跡をリズミカルに置いていく仕事へ展開した。無地部分を活かした画面が出てきた新鮮だったけれど変化の過程が不可思議な印象。そして樹木のような形象が出てきたことになる。アトリエが木々で囲まれている浅見さんにとってごく自然体の仕事。

■今回の個展にはどんな作品を? 自然光の入るギャラリーの壁面を飾っていたのは木々のようにも、また風景のようにも見える大作だった。濃淡が異なる楕円の筆跡がいっぱいに広がり、まるで画面が呼吸しているよう。会場に入った時のよどみない空気が今でも忘れられない。

■3Fにも小さなギャラリーがある。そこには2点かかっていて、特に向かって右の作品(04)にはハッとさせられた。画面全体に枝葉がうっそうと茂っていて、枝影のような白黒2種の痕跡がぼんやりと見て取れる。時に奥行きが逆転するエッシャー作品のように視覚を刺激してくる。

■浅見さんの作品は和紙の裏から描かれている。墨の痕跡を利用し、手前にくるものから描き、最後に裏返しているのだ。「風景画に見えるってよくいわれるんですけど、私は木を描いているだけなんです」。彼女には風景に見えてしまうのが不思議なようだが、無意識でこんな作品を制作しているなんて素敵だ。木というモチーフはまだまだ制作意欲をかきたてやまないらしい。

「浅見貴子展」
2002年10月22日(火)~11月23日(土)
ガレリア・キマイラ
東京都大田区久が原1-22-1
(東急池上線「久が原」より徒歩7分)
11:00~19:00(日月休、初日は18:00~)
入場無料
TEL.03-3754-2200

words:斎藤博美

art167_02_2「Matsu 1」


art167_02_3左は「Matsu 1」、右は「Matsu 2」


art167_02_4「脈2002.6」


art167_02_5「脈2002.9」


art167_02_6「脈2002.8」

2002-10-22 at 12:22 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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