2002/10/24
身体をデザインする
「みっともない身体?」
会場風景
■「身体」は私たちが生きていくなかで切っても切れないものだ。ここに出品している奥村雄樹、日野貴行の2人はそれぞれに身体とかかわる作品を作っている。奥村は自身の陰毛、唾液、唇の皮といった身体の一部を素材とし、日野は歩く、座る、握るなどといった人の基本的な動作に揺さぶりをかけるような意図をもって制作している。
■糸のようなものでつないだ透明のビーズの固まりは、照明の光を受けてキラキラしている。画廊を訪れてまず入口に近い位置にあるこの作品に近付いた人たちは、触れてみたいという衝動にかられるようだ。しかし、糸のように見えていたビーズの穴を通っていたのが、作家自身の陰毛だということを聞くとみんな一応に顔をしかめたり、笑ったりする。大人であればほとんどの人の身体にあるものだというのに。素材が陰毛と知っただけで、美しいと見えたものの印象がガラリと変わってしまう。
■ビデオ作品を今回はじめて日野は作った。短パンTシャツの普段着でアパートの扉を開けて出てきた彼は、スキー板をはいている。少人数専用のエレベーターを開け、長い板を入れるために、床に転がって板をなんとかエレベーターの中に押し込め。横断歩道を渡るために、手すりにつかまりながらなんとか上って、そしてこわごわと降り、立ち上がったと思うとなに食わぬ顔で横町を曲がっていく『スキーマン』。ボクシングのグローブを両手につけたまま、やっとのことでフォークを握ってスパゲッティを食べ、コーヒーを飲む『ボクシングマン』。
■2人の作品はまったく異なる視点から身体へのアプローチをしている。身体の一部分を自分からいったん離して他者との関係のなかにさらす奥村。日頃当たり前だと認識してきた行為や身体の機能に、ストレートに疑問をぶつけてみるようなやり方で制作をする日野。「身体をデザインする」というタイトルをつけて彼等の2人展をキュレーションした植田憲司にとっても、この展覧会はひとつの作品ということになろう。小規模ながら、観る者に揺さぶりをかけ、アーティストの個性や表現と企画者の意図を満喫できる展覧会になっている。
身体をデザインする
―不透明なインターフェイスー
2002年10月24日(木)~11月5日(火)
複眼ギャラリー
大阪市中央区西心斎橋1-6-26 3F
(地下鉄「心斎橋駅」から徒歩3分)
12:00~20:00(最終日~17:00)
水休
Tel.06-6253-3266
words:原久子
奥村雄樹「Romance」 (部分)
奥村雄樹『何食わぬ顔 / Innocent Invader』2002 クリスタル/プリント
奥村雄樹『洞窟の蝙蝠 / for our jelly bats』2002 作者の唇の皮、ストロー、金属
日野貴行『スキーマン / Ski Man』2002 VTR 11'40"
日野貴行『Life Inprisonment』2002 写真
2002-10-24 at 12:32 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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