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2002/10/25

眞田岳彦展

「揺り動かすもの」


art169_01_1「光の際:外でも打ちでもない3・3」
獣毛(モヘア、アルパカ)、羊毛
(以下すべて2002年)


■「さわってごらん、ウールだよ」というキャッチコピーは上手かったと思う。そこには、どこかおずおずとした初々しさや、そのあとの小さな歓声までが想像される。昔々、動物の毛を拝借して身にまとってみようなんて、誰が考えたのだろう。もちろん今回の作品にベタベタ触るのはマナー違反なのだが、触ってみたくなる感じを楽しむのは悪くない。

■眞田岳彦の作品は、冬の森を歩いているようだった。入口から右手に、コートを着たような、ぽっこりとした樽のようなかたまりが3体。ところどころ、はちきれんばかりの破れ目が見える。

■次の部屋に入ると、巨大なカーテンのような幕が現れた。つぎはぎの布地には、無数の穴があり、そこから光が射し込んで、壁や床こシルエットをつくっている。中を歩いていると、森という大きな体内の内側にいるのか外側にいるのか、ちょっとわからなくなる。私が見たのが夜だったからよけいなのか、「森は生きている」という物語を読んだときの怖れを思い出した。重い布が吊り下がっているという重力と、穴から射し込む光の波動がバランスをとっている。アルパカからヨゼフ=ボイスを連想してしまうと、やはり弱くなるけれど。

■もう一方の部屋には、無数の毛のかたまりが転がっている。会期中も新しくできたものが加わっているそうだ。私が見た日にも、ひとつ新参のオブジェがいた。これらは羊1頭分の毛で、内側から毛を引っ張りだしたかたまり。同じ1頭でも、さまざまな量や色やかたちがあるものだ。ここに棲息している生物みたいだった。

■また、植物の種子やつるを思わせるような、麻を束ねたオブジェは静謐だった。どの作品もファッション的ではなく、ちょっとした生々しさが見える。

■サブタイトルは「振動を宿すもの」。身体を軸に、さまざまな境界を融合させ、内と外つまり皮膚を開放する。生きているか死んでいるかは、「触れている」か「触れていない」かの違い。光も音も、目には見えない振動が現れたものだ。振動は、もうひとつの存在を知らせてくれる。それも生きている証拠だと気づいたとき、人々の心も揺り動かされるのかもしれない。

眞田岳彦展-振動を宿すもの
2002年10月25日(金)〜12月29日(日)
メゾンエルメス8階フォーラム
東京都中央区銀座5-4-1
(地下鉄銀座駅、ソ二-ビル裏)
11:00-19:00 無休
TEL.03-3569-3611

words:白坂ゆり

art169_01_2「光の際(キワ)」
photo:morimotomie, Hermes Japon


art169_01_381作品をつなぎあわせて展示。photo:morimotomie, Hermes Japon


art169_01_4「線は集まり、線に戻る」
麻(ラミー)、天然塗料
photo:morimotomie, Hermes Japon


art169_01_5


art169_01_6「1頭の羊」羊毛

2002-10-25 at 04:21 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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