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2002/09/15

BUSAN BIENNALE 2002 現代美術展

「さまざまな出合い」


art164_04_1島袋道浩「韓国のトラ」に抱きついたり乗ったりする子ども達。老若男女を問わず人気者。


■1981~94年迄の間、35歳以下のアーティストの参加を対象とした「釜山青年ビエンナーレ」として開催されてきた。98年と2000年には国際展という位置付けとなり、現代美術展、野外彫刻展、海の美術展と野外彫刻の国際シンポジウムが開催され、今回に至っている。今年の現代美術展は36ヶ国から94作家と32名の建築家の参加を得て9 月15日に開幕した。日本から参加した作家たちの作品を中心にリポートしたい。

■ビエンナーレ全体のテーマは「Culture Meets Culture 」、そして「Urbanity(都会ふう)」というのが今展のテーマ。衣食住にかかわるもの、輸送、観光、スポーツ、美術教育、そして都市計画など、都会の生活を取り巻くさまざまな要素を切り口とした作品が会場を埋め尽くしている。

■会場の正面玄関横に川俣正の作品がある。都会の生活を支えるエネルギーは石炭から電力に切り替わってしまった現代、どこの国も炭坑は閉鎖されてゆく。川俣は96年から元炭坑町である福岡県田川市のプロジェクト「コールマイン田川」を継続して展開しているが。今回の作品はその田川の民家と韓国の釜山から近いゴーハンという最近廃坑となった場所の民家を半分ずつドッキングさせ作品としていた。トタン屋根で、入口に日本でよく見かけるサッシの玄関引き戸、赤い郵便受け、田川の家の部分には畳部屋がある。韓国の家のエリアは冬の生活に欠かせないオンドル部屋がある。

■入口には赤いジュウタンの横に防護柵があり、マイクとカメラのフラッシュに迎えられる、人が通るとリポーター達の質問の言葉とフラッシュの灯りが飛び交う。これはNalachi Farrellの「Interview/ Paparazzi」だ。そして、階段を昇ってまず出会うのは島袋道浩「韓国のトラ」。白いトラの上には鳥が何羽も留まっている。島袋は何度か韓国を訪れるうちに、韓国の生活画にトラが描かれることが多く、さらに鳥が周囲に描かれていることに触発されてこの展覧会のための新作「韓国のトラ」をつくった。

■Goguesユ Gallery(ログズギャラリー)は、乗用車にサウンド・システムを搭載した作品「RESIDUAL NOISE / CAR #9」を出品。エンジンをかけ、その回転音や電気系統の音を拾いながら、即興的に演奏するパフォーマンスは、後部座席に座ると後部トランクに積んだスピーカーからの振動が背骨から脳天に直接ガツンと音を響かせる。

■Goguesユ Gallery の他にもいくつかパフォーマンスとその記録から成る作品があったが、チェ・ジョンファの作品もその一つ。カラフルな風船の間にデッサンの練習に使う石膏像が置かれ、楕円形にそのモチーフをイーゼルが取り囲む。40人ほどの女子中高生が一斉に描きはじめたのも壮観だったが、出来上がった絵がそれぞれの視点をもつものだった。美術教育への皮肉もこめながら、なかなか素敵なインスタレーションになっていた。

■観光や貿易など、人はさまざまな目的で移動をするようになった。飛行機など移動手段の選択肢が増えると、ますます交流は盛んになる。人の移動に伴い必ず異文化間の出合いがある。文化と文化が出合い、また新しい文化を都市のなかに作ってゆく。ヨーロッパとアジアとの出合いや、都市生活をとりまく要素の共通点と地域性など、この展覧会のなかで沢山のものに出合うことができる。

BUSAN BIENNALE
2002・Contemporary Art Exhibition
釜山ビエンナーレ現代美術展
2002年9月15日(日)~11月17日(日)
釜山市立美術館
(地下鉄第2線「釜山市立美術館」駅下車)
地下鉄第2線「釜山市立美術館」駅下車
会期中無休
入場料/大人7000W、大学生5000W、中高生4000W、小人3000W、65歳以上4000W、(家族割引制あり)

words:原久子

art164_04_2島袋道浩「韓国のトラ」/前で記念撮影する人も多かった。


art164_04_3韓国、朝鮮時代の生活画の中にトラがよく登場する。そんなことがよくわかる本も置かれていて、ボランティアの人が観客に説明をするシーンにも出合った。


art164_04_4Goguesユ Gallery「RESIDUAL NOISE/CAR #9」/パフォーマンスしているのは今回の作品を会期中マネージメントするスタッフのカン・キュンヒョン。。


art164_04_5川俣正 韓国と日本の廃坑になった炭坑町の民家を半分ずつドッキングさせた作品。(韓国の部屋部分)


art164_04_6チェ・ジョンファ「Drawing Contest」/女子中高生がデッサンをしている場面。


art164_04_7チェ・ジョンファ「Drawing Contest」/完成したドゥローイングも作品の重要な部分


art164_04_8自作ブースの前で今展コミッショナーの建畠氏にインタビューするRoderick Buc hanan

2002-09-15 at 02:24 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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9月28日、ついに横浜トリエンナーレ2005が開幕しました。横浜トリエンナーレ2005公式応援番組「Take ART Easy!!」では、一般公開にさきがけて行われた総合ディレクターである川俣正氏による作品解説の模様をお送りいたします。どうぞお楽しみください! ... [続きを読む]

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