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2002/09/21

杉山知子+塚脇淳+藤本由紀夫

「それぞれのドゥローイング」


art165_03_1CAP HOUSE 1階のLiving Roomでの作品展示
(ドローイング展は2階にて)


■このところ、「ドローイング展」なるものによく遭遇する。今さら言うまでもないかもしれないが、"drawing"は動詞では"引く""描く"、名詞になると"絵""素描"なんて訳されることもある。記憶に残しておきたい情景を断片的に写し取ったスケッチでもあろうし、日常の思考の過程をとどめておくメモかもしれない。

■杉山知子は絵画を中心に、97年の阪神淡路大震災で被災した後は「1000軒の家」という作品をシリーズで作っていた。また、彼女自身の生活とした密接に関係のある家族などをモチーフに描くことが多い。常に前向きな内容が見る人に勇気と希望を与える作品だ。そんな作品のための草稿的なドローイングなどが並ぶ。

■鉄の彫刻をつくっていて、現在開催中の釜山ビエンナーレの野外彫刻展にも出している塚脇淳(釜山アジア大会の会場となっている競技場に作品を設置)。ムクの鉄を叩いたり溶接したりして作品をつくる。鉄という素材に対するこだわりを随所に感じる。このドゥローイング展に出しているのは、2本の長さの少し異なる四角柱を、楔でとめて一本にしたり、横に二本をつなりだり、T字やカギ型にした小さなオブジェと紙の上に描いたドゥローイングだ。

■20年以上前のものも出ていたが、時代の隔たりをまったく感じさせないのが藤本由紀夫の作品。昨年のヴェネチア・ビエンナーレの日本代表作家として出品したサウンド・アーティストだ。五感に何らかの刺激を与えるものはすべてが彼の素材であり、作品になりうるように思える。ドゥローイング作品の紙の上のタイプ文字の配列は時間と空間を感じさせ、単に文字としてその意味を伝えるものではない。

■まったく異なるスタイルで制作する3人の作品のエスキースや草稿ともいえるようなドローイングをこの展覧会には出品している。3人は異なるテイストを持つのに、作品がバラバラに見えない展示は、音楽に例えれば異なる楽器で異なる楽譜を演奏しているのに、そこに新たな旋律を生んでいるとでもいうのだろうか。大きな見せ場はないが絶妙のハーモニーに驚かされる。

杉山知子+塚脇淳+藤本由紀夫
「ドローイング展」
2002年9月21日(土)~10月28日(月)
CAP GALLERY
神戸市中央区山本通3-19-8 CAP HOUSE内
(JR、阪神電鉄「元町」駅より徒歩15分)
11:00~20:00 火休
TEL.078-230-8707

words:原久子

art165_03_2杉山知子(左)「relations(pink) 」(2002),
(右)「relations(black) 」(2002)


art165_03_3杉山知子「shigei」(2002)


art165_03_4杉山知子(左から)「house」「family」「hana」(2000)


art165_03_5塚脇淳「element」(2002)のシリーズ


art165_03_6(左から)塚脇淳「Jun Tamba 2002」(2002)、藤本由紀夫「SV to VS」(1981)、
藤本由紀夫「88 TONES PER ONE HOUR」(1996)、
杉山知子(2002)


2002-09-21 at 01:09 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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