« 杉山知子+塚脇淳+藤本由紀夫 | メイン | 内田かんぬ展 »

2002/09/21

植松奎二展

「円錐からの脱却」


art165_04_1左から「静止のかたち-水」「静止のかたち-光1」「静止のかたち-光2」


■植松奎二の新作展がはじまった。インスタレーション作品にビデオを用いるということを初めて試みた。その『落下する水、上昇する水』は、2面の壁いっぱいに横長の滝の映像が音ともに映し出されている。同じ映像だが、一方は水が落下する様子、もう一方は上に昇っているようにビデオを逆再生している。そして、隣接するもう1面には壁に直接描いた滝のドゥローイングと写真がある。地球の大半を占める「水」をテーマにし、自然との関わりから「重力」をはっきりと感じる場が出来上がっている。

■CUBE(会場名)で『落下する水、上昇する水』を堪能し、版画工房内でのドゥローイングの展示を観ながらLOFT(会場名)に移動。こちらには、高い天井に届くほどの高さ約5mの樹木がにょっきり植わり、その幹の周囲を蛍光灯の白い光りの帯が螺旋状に取り囲む作品。そして、芯棒の周囲を螺旋状に延々と続く花びらのような銅板を用いた作品『花のように-螺旋の気配』などが展示されている。

■LOFTの2F部分にあがると、70年代の写真をまとめたカタログレゾネを、1枚ずつ手に取って観ることができる。また、会場の吹き抜け部分の窓を覆い隠すかたちにある水平線と垂直の関係を示す『静止のかたち』シリーズの蛍光灯などを用いた小品が並ぶ。

■70年代の写真には、本展の出品作で表現されている「人工と自然、中心と周辺、拡張と収縮、運動とエネルギー、水平と垂直」などの関係がここでも表現されている。手法や提示の仕方に変化があっても、根源的に感じたり考えたりしていることが一貫しているということだろう。

■植松作品というと「円錐」を即座に連想するくらいに、彼の作品には「円錐」が不可欠な存在だった。尖った一点で静止する姿の危うさや緊張感などが、彼の作品を印象づけてきた。その円錐というカタチを今回なるべく排除しながら制作をすることにつとめたという。今年55歳を迎え、作家生活も30年以上のキャリアをもつ彼は作家としての岐路に立つ時期かもしれない。


植松奎二展―軸・経度・緯度
2002年9月21日(土)~10月26日(土)
ノマルエディション / プロジェクト・スペース CUBE&LOFT
大阪市城東区永田3-5-22
(地下鉄中央線「深江橋」駅より徒歩8分)
11:00~19:00(土のみ13:00~19:00)
日・祝休廊
Tel.06-6967-354

words:原久子

art165_04_2カタログレゾネ「Keiji Uematsu Photo works:1972-1977」(布貼ケース入り)と額装状態のレゾネに入るオリジナルプリント


art165_04_3左から「コーナーピース-倒置」「置-水平」


art165_04_4手前「置-螺旋の場」


art165_04_5「花のように-螺旋の気配」、右上「静止のかたち-1」


art165_04_6「樹とともに-螺旋の気配」

2002-09-21 at 02:03 午後 in 展覧会レポート | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef407ba970b

Listed below are links to weblogs that reference 植松奎二展:

コメント