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2002/09/13
安彦文平展
「遊び心のある静物画」
右は「家庭菜園」2002
■カブトムシの頭部が人間の顔になった奇妙な絵を見た時から、気になっていた作家が安彦文平(アビコフミヒラ)さん。果実?のような物体から女性の目が鋭く見つめる作品を今年のVOCA展に出品していて、同じ作家であることに気づいたのが今年7月の個展(柴田悦子画廊)だった。その時の出品作を含み2000年の作品から新作までセレクトして一望できる展覧会が千葉県のギャラリーで開催されている。ちなみにこのギャラリー、カフェも隣接され、なかなか心地よい空間をしている。
■安彦さんは、静物を擬人化したり異質化させることで、ちょっと逸脱した静物画を描いている。素材は野菜や果実。白菜が鳥のように空を舞い、よだれが流れる梅干の山、怪しくニヤける洋梨もある。野菜を越えてオブジェに近いラディッシュ等々、存在するモノをそのまま描いちゃたまらないとばかりに遊び心が見え隠れしている。
■作品は油彩でかっちりと描かれている。落ち着いた色使い、緻密な描写に対して、ユニークなモチーフとのギャップが面白いのかもしれない。アイデアチックな大作「家庭菜園」も、網クジにかかってしまったバナナの「罠」も、思考回路を巧みにon/offしてやまない。色を失ったラディッシュが浮遊する「消し去れぬ記憶」は天地の動きで静かに感情を揺さぶってくる。
■昔、写実画の作家から「自分は花や果物を描きたいわけじゃなくて、静物を使って心情を描いているんです」という話を聞いたことがある。スキなく描かれた写真のような画面が心情とつながっていることに気づかされ、それ以来、モチーフの先にあるものを探すようになった。安彦さんの作品は静物画の範疇に入るけれども、「すました静物画」ではなくて「遊び心のある静物画」。肩の力を抜いて絵の中に入っていける引き出しを持っている。
安彦文平展
2002年9月13日(金)~10月14日(月)
ギャラリーアートサロン2
千葉県千葉市中央区汐見丘町9-13
(京成「西登戸」より徒歩3分、JR「西千葉」より徒歩7分、JR「千葉」西口より徒歩 10分)
11:00~18:00(木休)
入場無料
TEL.043-243-2327
words:斎藤博美
「ラディッシュ」2002
「目は口ほどにものを言う」2001
「唾液」2001
「消し去れぬ記憶」2002
「裏庭」2002(左)と「口は災いのもと」2001(右)
2002-09-13 at 02:13 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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