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2002/07/12
vol.40 広川 智基(Tomoki Hirokawa)
「風景へのリスぺクト」
“女の子写真”全盛期のとき、元気な男の子写真が現れた。テンションの変な理不尽な若さ。それが、「写真 ひとつぼ展」という公募展で見た、広川智基、高3男子の作品だった。ノートに感想を書いたら「家が近いので写真を見に来ますか?」という手紙が来た。残念ながらそのままになってしまったのだが、なんだかおかしかった。血筋のことは知らなかったし、写真を続けていてほしいと思っていた。今回はじめて会ったのだが、やんちゃな感じの予想ははずれ、素直な人だった。「上に向かって撮ることが多い」という。吊るしの展示もあったのだが、伝えたいことがあって、今しかできないことをやっている気がした。あたりまえの風景でも、撮る人のまなざしが見る人に力を与える。オヤジになって、時に自分本位になったりしても、この人はおもしろい写真を撮るだろう。
写真を撮りはじめたきっかけは?
■父がカメラマンなので、かえって写真はやりたくなかったんです。小さい頃、仕事場に連れて行かれて、「君もカメラマンになるの?」とかよくいわれて(笑)ただ、親の影響は少なからずあって、表現する仕事はしたいと思っていました。高校生のとき、誕生日プレゼントに一眼レフカメラをもらい、何の気なしに撮っていくうちに、気が付いたらどっぷりと浸かっていた(笑)。
最初はどんなものを撮っていたんですか?
■風景とか友達とか、身の回りを。はじめて「ひとつぼ展」に出したのも高校の写真。学校の風景を残しておけたのは、いま思えば貴重ですね。中学や高校って、なんかおかしいじゃないですか? ひとつのハコのなかに、毎日同じ時間に同じ人が集まってきて、部屋のなかに男女半分ずついる設定って、他にあまりない。当時はそれがあたりまえだったけど、いま見ると、「変なカンジだったなあ」と思う。写真を見て、記憶を思い返せることって、大事だなあと思いますね。
それは、素朴にホントにそうですね。「ひとつぼ展」に出品しようと思ったのは?
■自分でいいと思っていても、人はどうなのか。落ちても審査員の方から講評をもらえると聞いていたから。いいといってくれる人がいて、少し自信がついたかな。観客の方が、ノートにいろいろな意見を書いてくれたのもうれしかった。
いつもカメラは持っているの?
■わざわざ撮りに行くというより、いつでも「いいな」と思ったものに出会ったら、撮れるようにしてますね。
身についた映像感覚がありますよね。
■小さな頃から本当にいいものを見せてもらっていたんだと思います。自分でも絵や映画やライブに行きましたけど。身体で感じて強く残っているような。
人物も撮るんですか?
■人も撮っているけど、今回は。ただ、風景に対しても人のポートレートと同じところがあって、地元の風景はあいさつみたいな軽い感じで撮っているんですけど、旅先で出会った風景は、自分の知らない考えの人と出会ったときのような、ある種尊敬をもって撮る。知っているから撮れる写真も、知らないから撮れる写真もどちらも大事です。
3年ぶりの発表ですけど、大学に行きながら写真の技術も学んでいたんですね。
■大学を卒業してまた勉強しに行くのは、時間がもったいなかったから。もちろん、友達と遊んでいる時間も大切にしてました。適当にやっても時間は過ぎていっちゃうから、どうなりたいか考えて進むように。最近はもう思ったとおりにかたちに出せるのがうれしい。そのうえで、偶発的な発見があったりするのも楽しい。
初個展はどうでしたか?
■100%力を出し切ったうえで、反省点は次に生かしていきます。やってみないとわからないこともある。今回は、「空気には色があって、こんな瞬間もある」というのを伝えたかった。東京にもいいところはいっぱいある。写真は、自分の楽しみでもあるんですけど、人を悲しませるものよりは、やっぱり喜ばせたいです。自分の写真を見て、人が感じたり、身近なところを振り返って考えたりしてもらえたらいいですね。
※「お知らせ」
7月21日(日)まで個展を開催
ギャラリー ル・デコ 3F 渋谷区渋谷3-16-3
(渋谷駅東口より歩道橋を渡り5分。明治通り沿い右手)
11:00-19:00(最終日〜17:00)
TEL.03-5485-5188
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words:白坂ゆり
広川智基
(Tomoki Hirokawa)
1979年 東京生まれ
2001年 日本写真芸術専門学校二部卒業
2002年 和光大学芸術学科卒業
受賞
1998年 第11回写真「3.3m2ひとつぼ展」入選
1999年 第13回写真「3.3m2ひとつぼ展」入選
個展
2002年 ル・デコ/東京
現在、雑誌、広告などでも活動中
2002-07-12 at 12:09 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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