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2002/07/10
宇治野宗輝 日本シリーズ
「ビジュアル!和製英語」
「トゥエンティワンセンチュリー」読みとるまで少々時間がかかってしまった
■会場に入った途端、思わず笑ってしまった。そこには文字・文字・文字。書体も体裁もバラエティに富んだ文字アートが展示されていたからだ。正面の壁面にはカラフルな踊る文字で「トゥエンティワンセンチュリー」。21世紀も明けるまでは気が気じゃなかったっけ。聞けば、1970年代のコミックの吹き出しから引用した書体らしい。
■宇治野宗輝さんは「LOVA ARM」というバイクの部品とエレキギターをジョイントさせたドハデな楽器を制作している作家。ゴージャラスという松陰浩之氏とのユニットでライブ活動も展開しているので知っている人もいるはず。トラック野郎ばりに装飾されたこだわりの作品は細部まで実に丁寧につくられていた。すべて宇治野さん手作りのたまものだ。今回の文字作品も思わず聞いてしまったが、変わらず「手作り」を貫いている。
■安価な米国産のSPF材から制作した「Gパン」「Yシャツ」「Tバック」の3連発。すごい存在感だ。ハンティング用のパンツの布地を使ったオブジェ「ヘル」はさりげなく床置き。汎用の各種壁紙で文字をくるんだ「ワンルームマンション」は左右に黄色い電球付きで看板っぽい。読み取るのがやや難の「アメリカンコーヒー」はラッキーストライクの包み紙と千代紙のコラージュという懲りようだ。
■この展覧会のテーマは「和製英語」なのだ。私たちが日常的に使っていながら英語圏の人が聞けばおかしな言語で、カタカナ辞典では(和)表記されている語句。ここが変だよ日本人じゃないけれど、こんな国だからこそ誕生してしまったコトバをビジュアル化した。「ヘル」や「ファック」など使われにくい英語も含めてのアイロニー。アートとして提示することで語源や背景をちらつかせる。
■宇治野さんは特に野球が好きというわけではないらしいが、和製英語が野球用語に多いため作品も数点ある。「ゴロ」が「glounder」がなまった語とは知らなかったがこの作品は面白い。「ホームイン」スダレを画廊の入り口に飾る感覚もツボにはまる。セパ両リーグの優勝チームが日本一を決めるための決戦「日本シリーズ」をタイトルに持ってきた、日本語の競演だ。
宇治野宗輝 日本シリーズ
2002年7月10日(水)~8月10日(土)
ミヅマアートギャラリー
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
(東急東横線・地下鉄日比谷線「中目黒」より徒歩3分)
11:00~19:00(日月祝休)
入場無料
TEL 03-3793-7931
words:斎藤博美
「ヘル」=地獄。こだわりの一品だ
左から「Gパン」「Yシャツ」「Tバック」
室内の照明を消すとこんな怪しい雰囲気になる「ワンルームマンション」
人工芝で覆って3次元文字を丸いテーブルに乗せた「ゴロ」
「ホームイン」ギャラリーの入り口にはこんな出迎えが…
2002-07-10 at 05:27 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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