« vol.40 広川 智基(Tomoki Hirokawa) | メイン | 金魚伝来五百年記念展 金魚と杯洗 »
2002/07/12
桜井薫展
「時間の眺め」
屋上のラクダが目印
■昔ながらの風情が残る町、谷中にアートスペースが誕生した。日暮里駅からなら、「夕焼けだんだん」と呼ばれる石段を降りて飴屋で右折。まっすぐ歩くと、地元では有名な、屋上にラクダ(の造形物)のいる地下1階、地上3階のビルが見えてくる。
■ここは、現在は駒込にある「東京スタデオ」の発祥の地。「東京スタデオ」のアート部門CAS(Contemporary Art Studio)は、展覧会における作品や会場構成に対する技術提携、造形、施工を行うプロ集団で、横浜トリエンナーレや「JAM」展など、多くの展覧会を支えている。その彼らが、有志(横浜トリエンナーレでボランティアスタッフとして活躍していた若者など)とともに、新しいアートの“現場”をつくり出した。今後は、展覧会に限らず、ワークショップやトークを行ったり、また、アーティストのみならず、さまざまな人との交流の場として、ネットワークづくりを継続して行っていこうとしている。
■オープニングは、桜井薫展。展示スペースは1階と2階。1階は、凸レンズ状の円板が無数に吊るされたインスタレーション。ヤン・ファン・アイクの「アルノルフィ二夫妻の肖像」という絵で、夫妻の中央奥にある鏡に画家の姿が映っているというトリックがあるのだが、そんな視覚的な遊びを入れてみたかったという。玄関の格子や、外を通るクルマの色が映り込み、風景が変わっていく。
■2階は、空間全体に張り巡らされた竹ひごのレールの上をビー玉が流れていくインスタレーション。身体に毒な化学的な素材を扱うことが多くて、こんな懐かしい素材に惹かれたそうだ。「空間に描いたドローイングが奏でる楽器のようになった」と彼はいう。確かに、視覚的にも美しいけれど、音も涼やか。ビー玉がいったん壁のトンネルのなかに入って、壁の上から現れたり、頭上を走ったり、見ていて飽きない。ささやかなるものに、意外にスリリングな冒険心も感じる光景。
■両作品とも、移ろいゆく光のなかの「時間」をただ眺めていたいと感じさせる。過ぎ去る記憶はかたちではなく、空気感として残れば充分幸福かなあとぼんやり思った。
桜井薫展
2002年7月12日(金)〜9月初旬まで
HIGURE 17-15 CAS
東京都荒川区西日暮里3-17-15
(日暮里駅北口より徒歩6分、西日暮里駅8分)
11:00-18:00
(金・土曜/12:00-20:00)
月休
TEL.03-3823-6216
words:白坂ゆり
「孔雀のあくび」
奥にある「孔雀のあくび」のスケッチも映り込んでいる
ドローイング「Hyper-Reality Me fecit」より「Rosary」
「Memento」(部分)
2002-07-12 at 05:46 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40542970b
Listed below are links to weblogs that reference 桜井薫展: