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2002/06/29
長塚秀人展
「現実を更新するイメージ」
会場風景
■写真を撮ることは、その瞬間に出会ったありのままの現実を切り取ることだと思われがちだ。しかし、長塚秀人の場合は、自分の中に表現したいイメージが先んじてあって、それに叶った現実の場所やものを探し回り、撮影しプリントする。その過程で、客観的に存在していたイメージが、自分のイメージに向かってコントロールされていくという。思い浮かべたイメージを絵画に描くことを、写真に置き換えたような態度だ。
■公園の遊具や、花びらの舞散った草原。誰かのいた後、なにかが起こった後……。しかし、誰もいないかもしれないし、なにも起こってないのかもしれない。不在感。特定の場所や時間や物語はない。画面のなかにピンぼけの部分があり、現実と虚構のはざまのような、タイムトンネルに導かれていくような気になる。雰囲気をつくりやすい偶然の特殊効果(SFX)であるピンぼけではなく、彼のは、コントロールされた抽象表現としてのピンぼけ。それは分けて見なくてはならないだろう。
■色についても同様の気分だ。雨に濡れたシーソーの水色は、そのときの色でしかない。色は、なにかものの表面につかないと見えない実体のないものだ。なにと結びつくかによって、見え方も変われば、喚起される感情も変わる、移ろうもの。
■だからか、前回の個展より、刹那な美しさが増したのではないだろうか。しかし、それはノスタルジックではない。イメージは現実を変える力だと思うからだ。それは、現実の世界も、見方を変えれば捨てたもんじゃないというのとも違う。それでは単に現実を確認し、肯定するだけになってしまう。
■ピンぼけ写真のすでにあるイメージや、現存するものを写して見せるという性質上、ありがちなイメージとどう差別化していくか。そこが写真の難しさだと思う。以前から私は、現実を捉えた写真であっても<なにが写真としていい写真で、なにがアートしていい写真なのか>ずっと考え続けていたのだが、少し先へ抜けられそうだ。
長塚秀人展
2002年6月29日(土)〜7月8日(月)
ギャラリー人
武蔵野市吉祥寺本町2-26-12クノス吉祥寺2F
(吉祥寺駅北口より徒歩5分)
12:00-20:00
(最終日〜17:00)
水休
TEL.0422-28-7708
words:白坂ゆり
以下、本展より
2002-06-29 at 03:33 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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