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2002/06/29

眠り/夢/覚醒

「プリーズ スリープ」


art163_02_1エルネスト・ネト「姉妹の船」


■「眠り」を念頭に入場すれば、たいていすんなりと入り込める展覧会。最初の展示室にはポリウレタン布地のカヤが2つ。エルネスト・ネトの「姉妹の船」という作品だ。大きさの異なる2つの箱型の空間が距離をおいてつながっている。ストッキングを丸めたような内と外をつなぐ仕掛けが目につき、思わず手を入れたくなる。「これ触ってもいいんでしょうか?」「どうぞ」と即OKの返事をもらえた。中に入れる作品だったのだが、その的は気づかなかった。


■カヤの向こうの壁にフィルムが投影されていた。眠り続ける男性を延々と撮影したウォーホルの「スリープ」。5時間を超える長時間映像は開館時に回しはじめるという。1日1回の上映のため、夕方にならないうちに入場しよう。

■同展はタイトルのとおり3つのセクションに分けられている。眠りを即す第1展示室から第2の「夢」の部屋へ。この展示室は全体に作品が点在していた。エルンストのドアをはじめ過去に見たことがある作品がいくつか。この部屋でクセ者?は小粥丈晴&雄川愛の暗闇空間だった。入り口で作品の見える方向の指示を受けるものの、暗闇で行きたい方向へ前進するのは容易ではなく、やっとそれらしきモノを発見するも、ぼうっと浮かび上がっていてなんだか判別がつかなかった。作家が意図している「終わりのない闇は何をもたらしてくれるのだろう…」(解説冊子より抜粋)云々以前に、暗室で他人と衝突するかもしれない恐怖が先行してしまうからだ。一度に5人しか入れないとはいえ、導線が定かではないのだから、誰かさんとおでこをぶつける危険性の回避策まで考えてもらいたかった。

■もうひとつ個室があった。第3の「覚醒」セクションのブルース・ナウマンの声の部屋。何もない小部屋の中で「私の心から出ていけ、この部屋から出ていけ」と執拗に英語で追い立てられる。しかし憎々しいうめき声に脅されているにもかかわらず、その豊かな表情をもった声色に聞き惚れてしまいすぐに出ていく気にはなれない。もう少し薄暗くても雰囲気が出て良かったかもしれない。なかなか小気味よい作品だった。

■全体には紫色の解説冊子(入り口でもらえる)のおかげで「?」に陥ることなく楽しめた。例のカヤに入るべく再び最初の部屋へ戻ると、既に高校生くらいの男の子が中に入っていた。こまかな発砲スチロールに思い切り身体を沈める彼の至福な表情を見ていたら、こちらに笑顔が感染しそうになった。さて私の番。ポリウレタンは思ったより丈夫な繊維で、どんなにのびてもへっちゃらだった。サクサクと新雪を歩くような感触を楽しみ、そこに横たわる快感も味わった。

■同展はこの部屋から入るのだから、やっぱり最初にカヤで休息をおすすめする。夢も覚醒も眠らないことにははじまらない。夏の疲れをいやしに出かけてみては?

眠り/夢/覚醒
2002年6月29日(土)~9月16日(月)
川村記念美術館
千葉県佐倉市坂戸631
●電車利用
(東京駅から総武本線[約60分]佐倉駅南口下車、送迎バスで約15分、上野駅から京成本線[約60分]佐倉駅南口下車、送迎バスで約25分)
●自動車利用
(東京方面からは、首都高速~京葉道路~東関東自動車道、佐倉IC~国道51号線~八街横芝線経由[約60分]駐車場完備)
9:30~17:00(月休、ただし9/16は開館)
一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学・小学生400円 70歳以上は1,000円
TEL.043-498-2131

words:斎藤博美

art163_02_2ここが「夢」の展示室


art163_02_3ピエール&ジル「回転木馬」(左)と
「アリスの悪夢」(右)


art163_02_4内藤礼「死者のための枕」


art163_02_5シュテファン・ホダライン「新種族第一号」


art163_02_6常設展示室ではフィラデルフィア美術館所蔵のピカソ作品「三人の音楽家」を特別公開している

2002-06-29 at 02:33 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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