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2002/06/03
清岡正彦展—FLOATING DIVE
「誰のものでもない景色」
会場風景
■以前、アーティスト・インタビューでも紹介したが、無印良品の名刺ケースの中に作品をつくってもらった作家である。(それをオーナーである私が1年間持ち歩くという展覧会「開封景」は、7月31日まで)もともと白い彫刻インスタレーションというか、全体で見るとそれは絵画的なジオラマなのだが、空間のなかに景色のようなものをつくりあげてきた人だ。「開封景」は、これとあともうひとつの展覧会につなげるための実験でもある。
■窓に写真がある。打ち捨てられたボートに赤と黄色の浮きを散らした水辺の写真。それが水先案内人の役目をして、室内の空間を眺めていける。もともと染みのある床は、水の波紋のような想像を喚起し、床に置くべき土地は、今回は壁に張り付いている。見る側の立っている地平はどこか混乱する。重量感、表面がごつごつしたタブロー(平面)。原型は白く覆われているが、屋根の塔など、浮きの形が再構成されてユーモラスな部分もある。
■「ものとものとの間に起こる力、関係性を目に見えるようなかたちで表したい」という清岡の作品は,見方の術を心得ると案外奇想ではない。現実風景の゛気づき゛と想像。粋の構造や茶の湯的な古風な作品だ。
■今回は、一番最後に女性の写真が出てくる。本展をキュレーションした神奈川県民ホール学芸員の松尾こなぎだ。彼女がデスクでパソコンを眺めている姿は、展覧会の最初にある言葉につながっている。清岡の世界をデジタルワールドといい、ネットサーフィンのようにダイブを繰り返し、その景色にたどり着いて行くこと。本当に大切なものは見えないもので、それを見せたいという思いが綴られている。対等なコラボレーションというべきか。するとこの景色は誰が見た/見たい景色なのか。見たいものを共有した、というべきか。観客にとっては、小説の語り手のような目線越しに見ることにもなる。
■一方で、ものや人との関係性というのは、主体的な視点でツメを甘くしてしまう裏面もある。過程において選びとってはいるのだけれど。いまは素材や配置の生かし方など、作法に長けてきたところなのではないか。これまでなにを見せたかったのか、今回はストレートに見せている。そのため、今後コラボを終えて、自分が根源的になにが見たいのか結局遡ることになるのかなあと思ったりした。
清岡正彦展—FLOATING DIVE—
2002年6月3日(月)〜15日(土)
GALERIE SOL
新宿区早稲田町74蓑作ビル1F
(東西線早稲田駅1番出口1分)
12:00-20:00(6/15〜18:00)
TEL.03-5155-3663
words:白坂ゆり
「浮城 VI」(以下、木材、ウレタン塗料、石、ポリエステルパテ、エナメル、紙粘土)
「浮城 II」部分
水面を思わせる床に並んだ浮き
「浮城 III」
「関連の為の素景」
2002-06-03 at 05:57 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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