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2002/06/03
ひとりのために/NOT general
「反復するズレ」
イチハラヒロコ作品
(窓ガラスの向こうには夜景も見える)
■イチハラヒロコ、ノエル・カプンズ、豊嶋康子、アン・ぜーバッハという4人のアーティストが参加するこの展覧会は、オランダでのアーティスト・イン・レジデンスでイチハラとノエルが出会い、ドイツで豊嶋とアンが出会ったことに端を発している。イチハラの制作をノエルがサポートし、豊嶋はアンにサポートされることで、アーティストたちは異国の地で作品を完成させた。それはコラボレーションとは違ったものだが、「お互いの共有性を気付かせ、育てるものかもしれません」とこの展覧会の企画した箭内新一は書いている。
■日本で彼女たちは再会し、作品を発表することになった。今回は、はじめからコラボレーションをするということで制作を進めた。ギャラリー空間と、カフェ、美術書店という空間を、互いの意志や作業を共有しながら、それぞれ互いに相手を支え合いながら作品が作り上げられている。
■おなじみのイチハラヒロコの言葉の作品が、川に面した窓の透明なガラスに白い文字で描かれている。昼間は外の風景と文字が重なりあってなじんでいる。日没を過ぎると次第に文字が浮かび上がってくる。いつもと違うのは、いくつかの英訳がついているところ。
■今年の元旦から公開されているホームページ「テーブルB」http://www.table-b.comイチハラが「わたしに英語を教えて下さい。」100人の英訳大募集という試みをはじめた。窓ガラスの上の英訳はそのサイトに投稿されたもの(現在、そこに集まった英訳を展示する個展もモリサワMOTSで開催中)。投稿者に支えられてイチハラが作った作品ということになるのか。
■豊嶋とアンは、ドイツと日本との距離、ドイツ語と日本語という言葉の距離をemailでの英語によるやりとりで埋めてきた。彼女たちは、そのコミュニケーション・ツールを用いて制作をした。物語を書いては送信し、リレーで連歌のように物語を続けていくという作業をまず行なった。会場では実際に送りあった英語のテキストがプリントされ、豊嶋が日本語に翻訳したものを手書きでつくり、その手本に忠実に、アンが壁に日本語を書き写し。アンがドイツ語に翻訳したものを手書きにして、それを手本にして豊嶋が壁に書き写している。
■「翻訳」という作業の間に生まれるズレ。そのズレを容認しつつ、反復されるズレもまた作品にとりこんでゆく。人が互いに理解し合おうとするときには、それは母国語の違いだけではなく、同じ言葉を使う者の間にも解釈の違いは生まれる。そんなことすら作品にとりこんでしまっているアーティストたちは、「自分の表現のため」に相手の力まで味方につけているのかもしれない。美術書店の店内では、イチハラの言葉の作品をノエルが糸を編んで包み込むなどするという。
ひとりのために/NOT general
2002年6月3日(月)~25日(火)
SAIギャラリー
大阪市北区北浜2-1-16 永和ビル6F
12:00~19:00
日休(土 ~17:00)
tel 06-6222-6881
words:原久子
イチハラヒロコ作品
(辛らつなメッセージもいっぱい)
ノエル・カプンズ 「untitled」
糸を編んでつくった大きな木のシルエット
ノエル・カプンズ「This is Not A Maple Tree Part II」素材はフェルト
豊嶋康子とアン・ゼーバッハのeメールによる物語のやりとりを壁にインスタレーションしたもの
豊嶋康子とアン・ゼーバッハのeメールによる物語のやりとりを壁にインスタレーションしたもの
2002-06-03 at 01:14 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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