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2002/06/14

栗本佳典 精霊達の集う部屋

「出たんです。築45年の日本家屋に」


art158_02_1畳部屋で出迎えてくれるのは「四畳半の精」


■白いキューブのギャラリーが多いなか、変わった空間に出会うとトキメイテしまいがちな私。作品よりもまず展示室を眺めてしまったりすることもしばしば。先日ある作家の個展会場で「まず展示するための場所が先にあって、そこから作品のイメージが生まれてくる」という話を聞いて、それは今までいろいろな作家から幾度となく耳にした言葉にもかかわらず、やけに納得したのだった。無論、その空間でしかできない展開をしていたからにほかならない。

■栗本佳典さんは木版画で作家活動をスタートし、私が知るかぎりずっと植物をモチーフにした作品を手掛けていた。それが今年3月の個展でいきなり人間モチーフになっていたので驚いた。モチーフ自体の変化に仰天したのではなく、雰囲気の変貌に、である。植物の時は画面の余白を活かしモチーフをデザイン的に配置していたのに、人間は実物大くらい巨大で、人型に切り抜かれていて、おまけに天井から吊した展示で、裏側には別のこれまたインパクトのある図柄が刷ってあるのだ。墨一色の木版画なのでこれまでも特有の味はあったが、なにより、怪しくなった。

■怪しさに輪をかけた展示が現在開催中である。場所は「奥の院」というただならぬネーミングの築45年の日本家屋ギャラリー。急な木造階段を昇ると、昭和30年代の空気を残した懐かしの和空間が登場する。きしむ床、丁寧に組まれた柱、和室フェチにはたまらない魅力的な場所だった。

■こじんまりとした和室に入ると3体の「四畳半の精」が「いらっしゃいまし」とばかりに座ってご挨拶。でも実際は浮いていた。上を見れば「やもりじじい」や「泣き笑いぼうず」がこんにちは。一体ここは? ちゃぶ台に向かって座布団に正座し、あらためて部屋を見回す。押入が少しだけ開いている。覗きこむと「押入れの精」がうじゃうじゃ潜んでいた。部屋の外には「案内鳥」がニコニコ。ふふふ。風変わりなもてなしに、思わず笑ってしまった。

■精霊たちとしばし戯れ、後ろ髪をひかれながら会場を出た。まさに空間あっての作品であり、作品が空間の魅力を引き出していた。空間からインスピレーションを受けて作られた会場は、見る側にもビンビン響いてくる。作品と空間の関係について改めて考えたのだった。

精霊達の集う部屋 栗本佳典
2002年6月14日(金)~7月10日(水)
GALLERY二葉 奥の院
東京都品川区二葉4-1-17
(東急大井町線「中延」駅より徒歩5分、都営浅草線「中延」駅A1出口より右方向へ徒歩3分・A2出口より左方向へ徒歩4分)
11:00~19:00
木曜休
入場無料
TEL 03-3781-9648

words:斎藤博美

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上方にも作品が。左から「天井裏の精」「やもりじじい」「泣き笑いぼうず」

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少しだけ開いた押入からのぞき込むと…
「押入れの精」がうじゃうじゃ

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台所にも精霊たちがたむろしている。
手前は「案内鳥」

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奥の院への入り口は怪しげ

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1階のGALLERY二葉では同会期で古巻和芳展を開催している。こちらは明るいモダンなギャラリー

2002-06-14 at 03:13 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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