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2002/05/13
青木克世展
「世を飾る」
奥「回転ドア」 手前「方位角」(以下、藍画廊「手本」より)
■絵画や写真や映像を見ているときに、作者に捕獲された対象物が、フレームのなかで一度死んで再生してきたような気がすることがある。あちら側の世界からこちらを見つめ返してくる感覚だ。歴史的な寺院などの過剰な装飾にも、そのような黄泉(よみ)の世界を感じて怖くなることがある。
■青木は、本などからいくつかの装飾スタイルや文様、シンボリックな形態を採取し、陶を使って独自の彫刻に再構築する。もともとの装飾には、歴史的時間や人々の祈りなど、さまざまな要素を吸い込みながら現世に残っているものだ。しかし、その建築の周囲は都市開発されて別の時間にぽっかり差し込まれているようだったり、そのかたちだけがファッションに引用されていったり、その過程では、重厚さと表面的なペラペラな感覚の相反する感覚の同居がある。
■だから、現代に住む彼女がつくると、予想するほど、グロい感じでも神々しい感じでもなかった。それは、今回あえて白いフラットな箱空間で見せているからかもしれない。柚薬の厚みを部分的に変え、テカリとザラリの表面から換気される感覚を調整している。藍画廊は外光の入る空間なので、白い彫刻ゆえに朝の光や薄暮れの光で見たら、違ってくるようにも想像された。マキイマサルのほうで見たときは、建築の柱も含め、さまざまな角度や目線を低くしてみたりすると、たとえばロシア・アウ゛ァンギャルドのバレエの舞台を見ているようにも勝手に感じられて楽しかった。しかし、今後は彼女自身がこれらの装飾とどう交わり、どの方向に向かうかに依ってくるだろうと思う。
■ニュートラルな提示というのは、作家自身はその先を眺め、自分はなにを選ぶのか、どう批評意識をもってどんな提案をするのか、意志あってのものだからだ。
青木克世展—幕間劇—
2002年5月13日(月)〜25日(土)
マキイマサルファインアーツ
中央区新橋1-9-2新一ビル別館2F
(新橋駅1番出口2分)
11:00-19:00(5/25〜17:00)
TEL.03-3569-7227
*5/13〜5/18藍画廊でも開催された
words:白坂ゆり
「方位角」上部
「方位角」下部
「頭句」
手前左「示達」、奥「散文」、手前右「対照」(以下、マキイマサルファインアーツ「幕間劇」より)
手前「示達」、奥「写本」
2002-05-13 at 11:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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