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2002/05/11

松江泰治展

「上空写真」


art157_02_1「TYO」ビルの立ち並ぶ東京


■一見、航空写真。でも、そうではないと聞いた時、写された高層ビルよりもはるかに高いビルの存在を思い描くことになり「おお!」となる。

■松江泰治さんはずっとグローバル規模で地表を撮影してきた。砂漠、森、岩場の斜面。モノクローム写真で切り取られた風景は、光を浴びた白い部分がまぶしいくらいだ。できるだけフラットな画面をつくるため、撮影は影ができないよう雲ひとつない晴天の日に行われる。最初に作品と出会ったときは、一体この地の表層に何が隠されているのかと隅から隅まで見つめたものである。それくらい静かに挑戦してくる写真なのだ。

■今回は自然から都市風景へ一転した。高層ビル街や家屋の並ぶ風景をとらえ、東京、大阪、シドニー、アテネ、ペナンなど、自在に鳥瞰している。シティコード(=航空業界で使う都市名を表す3文字のアルファベット)をタイトルに使っているのも面白い。同じサイズの屋根が規則正しく並んでいたり、高さも大きさもちぐはぐなビルが入り組んだりと、地上からでは見えない特別な風景がある。こういった表面を探して、彼が高度な場所を転々と移動しているのかと思うと、その行為に共感が持ててくる。

■ギャラリーに隣接したオフィスには、新作の地表シリーズが展示されていた。タイトルのコロラドやモンタナといった地名と山あいや荒地の写真は、たぶん入れ替わっても気づかれないだろう。それくらい、これといった特徴のないどこにでも存在しそうな場所であることにこだわっている。

■任意の風景を限りなくフラットに写すことで、場所の固有性を排除し、新たな視線で写真と向き合わせてくれる松江作品。何かを発見したくて、ついしげしげと眺めてしまう魅力がある。

松江泰治展
2002年5月11日(土)~6月8日(土)
TARO NASU GALLERY
東京都江東区佐賀1-8-1 食糧ビル2階
(地下鉄東西線「門前仲町」駅より徒歩15分 )
11:00~19:00日
月曜休
入場無料
TEL 03-3630-7759

words:斎藤博美

art157_02_2「OSA」こちらは大阪の中層ビルが被写体

art157_02_3会場風景

art157_02_4「PEN」屋根が整然と並ぶペナン風景

art157_02_5「ATH」アテネは白い壁面の建物が印象的

art157_02_6オフィスには地表を写した新作を展示

2002-05-11 at 12:58 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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