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2002/05/25
英裕展
「ワクワクの向こう岸」
「ワクワクの木 ミクストgo-go-BAR
"柑橘の空"」
■画風が変わっていて驚いた。英(はなぶさ)ゆうという名のときに、関西の遊覧でも紹介されたことがあるが、当時はドーパミンあふれるパンキッシュな作品だった。パフォーマンスもしていたらしい。東京でその前年に開かれた個展では、画面のあちこちで、楽園と表裏一体の地獄の入口が口を開けているような、見る者にスキを与えない迫力に気圧されて退散した気がする。資料で見ただけかもしれないが、記憶が混乱している。
■それは数ヶ月の闘病生活を終え、再生のエネルギーを爆発させたものだったらしい。今回の「ワクワクの木」のシリーズは、闘病中に祖母が身代わりになるように亡くなったこと、その後タイを訪れた経験から生まれたという。「ワクワクの木」は、「中国の東のワクワク島(倭国を思わせる)に女性の生える樹木がある」というアラビアの伝説をもとに、バンコクのゲイバーで見た少年たちの面影を重ねて描かれた。
■樹木の精霊のように、成長していく生命感と、ひっそりと画面の奥へ続いていくような不思議な世界。「きれいだけど怖いね」と観客が話していたが、まさに。その二律背反的な精神性は、変わってないのだろう。「供花」のシリーズもスピリチュアルな花環のような絵もあるのだが、そのままを普通に描写している絵に奇妙さがある。
■あらためてファイルを見直すと、自我と格闘してもがき、いっぱいいっぱいな姿が、失礼ながらちょっと笑いが出てしまうくらい、つくづく本気に思えた。本作は、肩の力を抜いて周囲を見渡すことができるようになった成果なのか。あるいは周囲のものや人に感応しやすいのかもしれない。
■しかし、影響を経てさらに根っこにもっているものはやはり強固に再び芽吹いているようで、「疑惑」「LANTOMH」では、更なる変化の予兆がある。絵を描くことは、どこかで見せ者になることかもしれない。その覚悟。「元気があればなんでもできる」(by猪木)。伸びやかな気持ちになった。
project N 英裕展
2002年5月25日(土)〜8月15日(木)
東京オペラシティアートギャラリー4F コリドール
新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティアートギャラリー内
(京王新線初台駅東口直結)
金土曜〜21:00、入館は30分前まで)
月、8/4休
企画展、常設展との共通料金
一般900円 大高700円 中小500円
(常設展とのみの共通料金 一般300円 大高200円 中小100円)
TEL.03-5353-0756
※project Nは、故難波田龍起氏の遺志により、若手作家を紹介するシリーズ。
words:白坂ゆり
「ワクワクの木 ミクストgo-go-BAR"沈静"」
「供花」
会場風景
「ワクワクの木 ミクストgo-go-BAR"疑惑"」
「LANTOMH」
2002-05-25 at 03:08 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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