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2002/03/06

齋木克裕展

「写真と空の相性」


art152_01_1「Place」水面を見るようにのぞきこむ


■月のような円い空と、地面に四角い空。よく見ると、鳥が飛んでいたり、飛行機雲がすーっと画面を分割していたりする写真。日常生活でも、意図したような構成に偶然に出くわすことって確かにある。どう切り取るかでもあるけれど。床置きの写真は、空を飛ぶカモメを同じ場所で撮影したもの。日中の青空や夕焼けなど、時間によって変わる表情が並ぶ。その間を、時間を縫うようにして歩く。下に空をのぞく行為が、水たまりに映る空のように宙づりの感じを受ける。

■空の写真は、表面がアクリルなので周囲も映り込む。写真に撮影されているイメージ(かつての、過ぎ去った時間・空間)と、いま目の前にある「写真」という存在とが重なり合ったものとして考えられているからだ。床から少し厚みを持たせ、逆に張り付いた表面の薄さを見せて、イメージの希薄さ(ペラペラな感じ)を出そうとしているという。写真としてすくい取られたのは、あくまで一断面ということでもあろう。

■そこに写っていることで、彼が確かにそのとき「見た」という時間が凝固される。そこに見る人がかかわる、新たな地点から振り返ることで、時間の厚みが生まれる。分断しながら続いていくように想像される。

■空という被写体には、情感を込めているわけではない。「たんに、こういう空がある。それ自体何もないところが空なわけで、何もないものが写るという逆説的興味だ」という言い方をする。世界の見えない構造が、写真のかたちをともなって現れる。こうして眺めると、空は映画のスクリーンみたいだ。

■はかないけど、いつもある空。今回は、いままでの被写体に比べ、ミニマルでありながら、よりイメージの広がるものになっている。私は、写真としてのおもしろみがあってこそ、構造や理屈のおもしろさを考えたくなるのだと思う。いままでも彼は、建物や道路など、時折ヘンな写真も撮っている。カモメが律儀に配されているのも、考えてみればちょっとユーモラス。今回の展示は、美しくスッキリしているけれど。それが建築的になったり、絵画的になったり、映画的になったりして、より写真とはなにか考えさせられる。写真とはなにか、映像とはなにか、考えると空のように果てしない。

齋木克裕展「RESOLUTION」
2002年3月6日(水)〜4月6日(土)
SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23柏湯跡
(JR日暮里駅南口徒歩6分or地下鉄根津駅徒歩8分)
12:00〜19:00 日月祝休
TEL.03-3821-1144

words:白坂ゆり

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「Circle」よく見ると点々はカモメの群れ

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「place」。奥の壁に、ベルリンのテレビ塔を写した「Split」。塔の位置が少しずつ横の位置に移動

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「place」右下の影は、私が写真を撮るときに映り込んだもの

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「Arrangements」遠くから見ると、ストライプの柱

art152_01_6
上半分が空、下半分が建造物の2分割の写真を連続

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「Frames」白い背景の前にステンレスのよるフレーム状のオブジェクトを設置して撮影。一見描いたように見える

2002-03-06 at 10:50 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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