2002/03/01
横山裕一展
「戦いはネバーエンド」
外から見た展示風景
■「ククッ」静かな半笑い。友人が教えてくれたこの展覧会、じわじわとハマッてしまった。自覚的なのか無自覚なのか「こりゃ、アートっすよ」といいたいけどどうなのよ、という天衣無縫なマンガとイラスト。しかし、やりたい放題というわけではなく、どこかストイックな感じもする。(え?ホント?)カンディンスキーみたいな構成の絵があったり、マルや四角で描いた「わたしたち」はパウル・クレーみたいだとも思った。
■『サイゾー』でイラストを描いていると聞いて作家ファイルを見たら、'97年の「チョイス」(『イラストレーション』誌の公募展)で入賞していて、いまと少し画風の異なるD Mにハッキリと見覚えがあった。宮崎学『不逞者』や野坂昭如の著書の装幀、『噂の真相』の表紙など目にしていたものも。なんだ、すでに“侵入"されていたのか。
■聞けば、学生の頃は油絵を描いていて、公募展に落選し続けていた頃、知人の助言でイラストに転向し、今はマンガと両方描いているという。ウィリアム・ブレイクやフリードリッヒ、雪舟などが好きだそうだ。
■マンガのなかでは、惑星みたいな頭の男や帽子が頭と化した男などの異色キャラが、始終バトルを展開している。その間にもアースワークのように石が積み上がって山ができたり、戸谷成雄の削り立ての木彫みたいな障害物がどんどんやってきたり。ネタを明かせば、川俣正みたいなインスタレーションの発想をマンガに持ち込んでいるんだそうだ。
■『キン肉マン』が戦う超人みたいとも思ったが、本人が知るマンガは『ビー・バップ・ハイスクール』のみ。バトルものも「動き」を見せたいからで趣味性からではない。戦いが緊迫したかと思うと、無表情な人物の顔を「ぬーっ」とアップで抜いたりする。セリフもなく、「ゴロゴロゴロ」「グイーン」などの擬音のみ。この字体がウマイ! 金太郎飴のようにいつでも理由もなく戦っているのは「できるだけ均一なトーンで、どこから読んでも1ページで見てもいいように」。それには、「妖怪図」みたいな絵巻物の影響もあるという。
■絵巻物や障壁画のように、どこから見ているのか、自分の主観ではなく何者かが見つめているような視点で描きたいという。戦争映画のカメラの視点はその最たるものだ。「マンガの人物たちには栄光がなく、いつでも口に含んだ青酸カリで自殺できるスパイのような使命感を背負っている」。逃亡者みたいに感じたのは、そのためか。
■マンガは情報量が多く、原画とほぼ同じ価値のまま量産されていく感じに解放されたという。しかし自由が好きなのではなく、むしろ制約のあるものに惹かれるそうだ。それでいて、「マンガは思いついた最初と、人に見せる最後は楽しいけれど、あとはずっと苦しい」ともいう。描きたくはない説明的な絵なども、だからこそどう描くかやってみたいし、「電話帳のようにブ厚いマンガ」を夢見ている。でも、描きながら笑ってしまうこともあるそうだ。「ずっと雨が降っているような絵が描きたい」という言葉も印象的で、逆に雨上がりみたいな気分だった。
横山裕一展
「レンゲ」と「わたしたち」とその他 最新の活動
2002年3月1日(金)〜3月27日(水)
グラフィックステーション
東京都渋谷区神宮前1-6-1-パレフランス1F
(明治神宮前駅or原宿駅)
11:00〜20:00(最終日〜18:00)木休
TEL.03-3479-6020
※今後の予定
3月下旬発売『COMIC CUE』に掲載
『みづゑ』4月号にて工作キットを掲載
マンガは、こちらの『サイゾー』ページでも掲載。
words:白坂ゆり
COMIC CUEに掲載されるマンガより
「もてはやし」より
以下「わたしたち」より
筆痕や水彩のにじみやしわも生かしている
2002-03-01 at 10:33 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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