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2002/03/11

加藤万也展

「ヒト粒で何度もおいしい」 


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「Double Negative(二重否定)」(2000)210×210×110cm


■大阪の2ケ所と東京1ケ所の計3ケ所で同時に個展を開いているO JUNの大阪での展覧会をリポートしたい。はじめてこの名前を聞いた人には、いったいどこの国からやって来たアーティ ストなのだろうか、とまず興味をもつだろう。名前の一部をとってつけたアーティスト名だ。東京で生まれ育ち、東京藝大大学院を修了後、スペインとドイツに滞在、現在は東京で制作活動を行なっている。

■クリームがかった色の紙に、鉛筆、クレヨン、グワッシュ絵具などを用いてO JUN は、あえて立体感を消し去ったような平板な絵を描く。国立国際美術館では96年以降の作品を中心に約100点が展示されている。校章や家屋、衣類など、モティーフはどこか懐かしさを感じさせるようなものが多い。

■会場には、机の上に作品と同名の文章(これをO JUNは「作文」と呼ぶ)が設置され、座って読むことができるようになっている。作品展示に併せていっしょに文章を読めるように設えるのは『花・TV・コップ』展以来2回目。文章と絵画作品は直接のつながりをもったものではないが、 O JUNにとって絵を描くということと、文を書くということは2つの異なるイメージをする方法であという。

■鉛筆だけで描くとき、1枚の絵に数百本の鉛筆を使うこともあるという。一見、単純な形を持ったものではあるが、決して軽いものではない。必要以外のことには触れずに、重要な事柄に言及していこうとする姿勢が見える。戦争をイメージさせるモティーフも頻繁に登場することについての質問に、彼は自分の生きている時代と切り離せないものとして扱うことはあるが、それに対する社会的、政治的なメッセージを直接加えてしまうと表現を狭めてしまうので、単なるきっかけつくるモティーフとして用いていると答えていた。

■ON GALLERYでの展観には「ぺかぺか童子ー上下と水平ー」というタイトルがついている。「ぺかぺか童子」とはなんともユーモラスなメーミングだが、意味を限定しないところがO JUNのスタイルなのだろう。展示点数は多くはないが、コンパクトにすっきりまとまった空間が完成している。

公募・今日の作家シリーズ
加藤万也展
2002年3月11日(月)~3月22日(金)
大阪府立現代美術センター
大阪市中央区大手前3-1-43
大阪府新別館北館・南館
10:00~18:00
TEL.06-4790-8520


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「Double Negative(二重否定)」家が動いている。でも、ホントは電車も動いている。

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「Medicine Package(クスリ箱)」(2001) の一つセルフィッシ酸の箱

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「Mannered(作法の話)」(2000)30×15×25cm フォークの上でなにやら話し込むスーツの男たち

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「Unidentified Falling Object(未確認落下物体)の原寸大レプリカ」(2002)英字新聞のコピーらしきもの、それを日本語役した張り紙もすべて作品のうち

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「Alchemist(錬金術師)」(2002)のシリーズ

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「BUTA Lard(ブタラード)」(2000)の部分

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「To Let(貸出し)」(2000)便器に向う3人は延々と同じ態勢のまま、開いている便器には入れ替わり立ち替わり用を足しに来ては去る男たちが。

2002-03-11 at 11:11 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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