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2002/03/12

美術館物語

「ウラはオモテ」


art153_01_1モネ「ジウ゛ェルニーの積みわら、夕日」


■展覧会ってどうやってつくられるの?学芸員って何する人? 観客にとって美術館はまだまだ謎が多い。そんな疑問に答えて舞台裏そのものを展覧会仕立てにしたのが本展だ。「20周年記念展を通常の収蔵品展にはしたくなかった」と前山裕司学芸員は語る。

■ 本展は5つの章で構成されている。「序章」では、美術館のコレクションが1922(大正11)年創設の埼玉会館から引き継がれていることがわかる。埼玉県立近代美術館の第一回展から田中一光、亀倉雄策、葛西薫らによる展覧会ポスターとともにたどる展覧会の系譜やコレクションのエピソード。

■第1章では作品の真贋を切り口に、作品収蔵の簡単な経緯がわかる。ピカソや岸田劉生の絵画とともに、鑑定書や「カタログ・レゾネ」と呼ばれる作品総目録、制作年月日が読み取れる日記などが証拠物件のように並ぶ。TV「なんでも鑑定団」やマンガの「ギャラリー・フェイク」の気分。その先で「複製芸術の版画は?」「彫刻の原型と鋳造は?」という「オリジナル」についての考え方にも触れている。日本画の箱書きや印なども豆知識を得られる。

■ 第2章では、内外の美術展への貸し借りについて。クレート(郵送用の木箱)や、作品が旅したマップなどから世界規模の財産なんだと再認識。第3章では作品(コピー)の並べ変えや照明などを実際に動かしたりもできる。やってみると「なるほど」と実感しますよ。

■ 終章では、学芸員が次回の展覧会準備をする部屋が設置してあるが、なかなかそこにいられないようだ。これからの美術館は、学芸員室は展示室(観客の動向)に近くあるべしかな。

■ 本展は予算の少なさにも起因しているが急ごしらえではない。たとえば「シャガール展」のときは、海外からお金の力でまるごと借りるのではなく、日本の美術館やコレクターを洗い直したり、下絵に照明を当てステンドグラスの再現に近付けるなど技術で見せていた。ボランティアの蓄積、収蔵品の活用、椅子コレクションを使った館内の模様替え、前山学芸員自らがショップの店長を務め買付けしたり。新規的試みでも基本は変わらない。そして、この美術館の展覧会には思い出がたくさんある。

美術館物語
2002年3月12日(火)〜5月6日(月)
埼玉県立近代美術館埼玉県さいたま市常盤9-30-1
(R京浜東北線北浦和駅西口3分、北浦和公園内)
10:00〜17:30(金曜は〜20:00。入館は30分前まで)
月曜、4/30休(4/29開館)
一般520円、大高420円
TEL.048-824-0111

words:白坂ゆり

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鑑定書、作品番号がわかるレゾネ、海外の展覧会カタログなど

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絵画の裏側。左:須田剋太「1964b」布や新聞紙が見える。右:田中保「キュビストA」の裏にはラブレターが。奥は田淵安一「未完の季節No.37連樹」(部分)

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中野四郎「知性」左が石膏原型、右が没後鋳造のブロンズ。最近の評価では「没後鋳造はオリジナルと区別する方向」だとか

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絵画の旅。クリーム色の箱はピサロのクレート

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可動壁を体験する観客

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ガラスの展示ケースの内側にも入れる。奥には温湿計。手前は絵画の高さの体験

2002-03-12 at 08:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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