2002/03/09
レン・ライ生誕101年映画回顧展
「17本のシャワームービー」
レン・ライの処女作「テュサラヴァ」Tusalava 9分/白黒/サイレント/1929
■席を立つ。平均5分の短編ばかり17本。上映時間は90分あまり。見終わった時、脳裏には「?」がいっぱい残っていた。色彩のシャワーを浴びた感じといえばそうだし、ドキュメンタリーチックな実写はカチッとしていた。ジャズをベースにしたテンポのいいリズムがまだ耳の奥に残っている。
■レン・ライは実験アニメーションなどアヴァンギャルドな仕事で知られる映像界の巨匠。約70年前に、フィルムに直にペインティングを施した抽象アニメーションを完成させた。色面の動きとサウンドが一体化した生きているような映像作品は、気楽に眺めているのが心地良い。わたし的には、これはウォーホル的とかイヴ・クラインみたいとかうすぼんやりとイメージを重ねていたが、どっこい、レン・ライの方が先だった。処女作から最晩年までよりどりみどりの14本をラインナップしている。
■一転して、モノクロームのドキュメンタリー映像もある。「戦場のカメラマン」「殺すか殺されるか」という戦場を舞台にした両作品は戦争賛辞そのものだが、英国政府の広報フィルムと知って納得した。手紙の宛先を間違えたせいで、危うくケンカ別れしそうなカップルを撮ったほほえましい作品「N or NW」は郵政省のCMだったりする。短編ながらも起承転結のストーリーがきちっと見てとれる3本。
■そうなのだ。上述したように、抽象アニメーションとドキュメンタリーが入れ混じって、一挙に17本のフィルムが次々と回るため、唖然としてしまったのだ。一挙にいろいろな世界を見せられると作家像がぼやけてしまう。
■あの夜を振り返ってみる。夜8:10、渋谷から青山通りを歩くこと7分、こぎれいなシアターに入って席に落ち着く。5分ほどの予告が終わると処女作「テュサラヴァ」がスクリーンに登場する。増殖消滅するアボリジニ的な文様のサイレントムービーである。そこから年代順にたんたんと進み、レン・ライの死後に残されたドローイングでつくられたというシンプルな線のアニメーションで幕を閉じた。
■映写室から階段を昇りながら頭の中で首をかしげる。ポップなアニメーションに対しドキュメンタリーの違和感がかくせない。チラシを読み直し、CM作品だと分かってすぐに納得した。なるほど、クライアントありきの作品か。最初から知っていたらモヤモヤすることもなかったかも。いや、やっぱり後から知った方が「!」を楽しめそう。いずれにしても、鑑賞後しばらくしてからレン・ライのすごさがわかってくる。
レン・ライ生誕101年映画回顧展
2002年3月9日(土)~3月29日(金)
シアター・イメージフォーラム東京都渋谷区渋谷2-10-2
(JR「渋谷」より徒歩5分、地下鉄「表参道」より徒歩7分)
連日20:30~22:10(1回上映、無休)
入場料当日一般1500円、学生1200円、小人・シニア、シアター会員1000円
TEL.03-5766-0114
パペットアニメーション「ロボットの誕生」Birth of a Robot 7分/カラー/1936
郵政省のCM「N or NW」7分/白黒/1937
イヴ・クラインのようなイメージ「ランベス・ウォークで踊ろう」Swinging the Lambeth Walk 4分/カラー/1939
戦時中のカメラマンを追った「戦場のカメラマン」Cameramen at War 17分/白黒/1943
生前最後の作品「空間の粒子」Particles in Space 2分/白黒/1979
2002-03-09 at 11:04 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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