黒沢まや展 手足 ピザ ドーナツ

「最初が肝心。」

ピザの絵が目をひく壁面

■カフェ･バーの奥にホワイトキューブ。そこに掛けられたペインティング。ピザ!ドーナツ! 空腹の胃が反応する。甘党の私にはドーナツの方が美味しそうに思えた。食品の絵より先に、女性の腰部を描いた正面の大きな作品が目に飛び込んできたが、そこからピザのある右側壁面に向いてしまったのが運のツキ。

■そうそう、DMは足の絵だったのだ。ふと全体を見渡せば、手足のアップが大なり小なり並んでいた。ところでさっきから背中に誰かの視線がちらついている。ついにカフェの席を立った女性が話しかけてきた。「この作者なんです」黒沢まやさんだった。

■聞けば、オープンから毎日来ているという。ギャラリーに一番近いテーブルにお客として座って、見にきてくれる人を待っている。会期中はずっと通いたいとも。美大を出て描くのは好きながら特に発表したことはなかったようだ。様々なアートやアーティストに出会ううちに、自分の作品がどう映るのだろうと思い、とにかく一度個展をやろうと思い立ったらしい。動機とはそういうもの。自分を動かす何かが必要なのだ。

■作風とかテーマとか、おそらく定まる手前の段階だと思う。顔以上に表情が豊かに感じられる手足のパーツに興味を持ち描いている。ピザやドーナツは、手足に比べ感情移入なく取り組めそうな気がして挑戦したそうだ。「モチーフが決まってしまうとあとは作業になってしまうけど、それがすごく楽しかった」

■作為的でなく…画面から奇妙な空気が出せたらいい。こう語る黒沢さん。奇妙な空気かあ。ギャラリーに足を踏み入れた時、カフェとリンクした開放的な空間にやけに合った作品だと、胃よりも先に反応していたことを思い出した。

黒沢まや展 手足 ピザ ドーナツ
2002年1月24日(木)～2月5日(火)
現代HEIGHTS gallery Den
東京都世田谷区北沢1-45-36
( 東急井の頭線「池ノ上」より徒歩5分、小田急線「東北沢」より徒歩5分)
15:00～25:00(無休)入場無料
TEL.03-3469-1659

「ラヴ」

「チョコレート」

こちらの壁面は手足の作品が並ぶ

「花」

ギャラリーとカフェはこのような関係