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2002/01/19
羽藤明夫映像展
「夢のそのまた夢」
「Forgotten family」(5 mins.)より
川から頭を出す亀に触れて遊ぶ少年
■羽藤明夫のつくる映像作品は手描きが基本のアニメーションだ。油絵を専攻していた彼はは大学3年までは仏像をモティーフにして絵画の制作を行なっていたという。だが、大学の研修で奈良などの古都を訪れ、そこで本物の仏像を目の当たりにして、こんなにスゴイものがあるのか、とショックを受けたのだそうだ。それから筆が進まなくなった。そんなとき映像との出合いがあった。現在は東京藝大大学院博士課程在学中だが、映像作品をずっと継続してつくっている。
■今回の個展では「忘れられた家族 Forgotten family(未完成)」「いつか見た夢」「白い犬」「間」という4本の作品を上映している。「いつか見た夢」以外はいずれもサウンドも羽藤自身が作っている。オイルパステルで描いたものや、油彩などそれぞれによって原画のタッチも少しずつ違う。どの作品も丹念に描かれた原画から触感が伝わってくる。
■99年制作の「間」はきわめて初期の映像作品で、原画はキャンヴァスに油彩あるいは、キャンヴァスに木炭をつかっている。絵を描いていると裸の女性と老人が現われた、という設定からはじまるこの作品。愛媛県今治で生れ育った羽藤は、大学進学で東京に出ることになった。都市の生活は、それまでとはまったく環境の違うものだった。そんな中での葛藤や思いが映像として可視化されているようだ。
■ストーリー性のある「忘れられた家族」は、まだ未完成のままの上映となったが、紙に木炭で描かれた赤ちゃんから少年へ成長してゆく主人公の男の子は羽藤自身の姿のように思える。「いつか見た夢」は物語があるようで存在しない不可思議な世界を作り上げている。時折通りの端を歩いているのは羽藤のように見えてくる。映像の世界のなかに入り込んで、その幻想の世界を内から見たり、外から見たり視点を変化させるための装置と自らがなっているかのようだ。
■「動く絵」という言い方はあまりにもストレートすぎるかもしれないが、羽藤の作品はそう呼びたくなる。ぎこちなくもある映像の作り方、このやり方だからこそ伝わる要素が沢山含まれているように思う。ある日、額縁のなかの絵が動き出した、そんな夢のような世界をつくり出してくれる原画が生きた映像作品だ。
羽藤明夫映像展 Private Garden
2002年1月19日(土)~2月1日(金)
Studio J
大阪市西区新町3-14-8
(地下鉄千日前線、長堀鶴見緑地線「西長堀」駅1番出口すぐ)
13:00~19:00(最終日~17:00) 日月休
TEL.06-6110-8508
words:原久子
「Forgotten family」(5 mins.)より
「いつか見た夢」(15 mins.)より
夕日に照らされる丘のうえの家並み
「いつか見た夢」(15 mins.)より
モノクロで描かれたシーン
「白い犬」(5 mins.)より
柔らかなオイルパステルの風合いが印象的
「白い犬」(5 mins.)より
夢で見た光景を再現しようとした作品。犬は自分自身かもしれないという
「間」(12 mins.)より
2002-01-19 at 02:22 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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