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2002/01/21
早川陽子展
「やま・ほし・しま歩き」
階段から展示がはじまる
■階段の白い壁面に小さな白い山々。壁からつまみ出したように点在している。生乾きの石膏の上にサランラップを被せ、手で押しながらできたかたちだ。
■展示室のなかは、小さな惑星群のような球体のインスタレーション。どちらも何度か見ているシリーズだが、空間に合わせて展示が変えられている。山や球の個々に人格があるかのように表情の差違を見つめ、山と山、球と球のあいだの距離感や関係性を大切にしている。
■前回展で、早川がカメラマンに会場撮影をしてもらっている間、インスタレーションの隅の方で壁に背をつけて床に座り、文庫本を読んでいる風景を見かけた。それが彼女の居場所のようでしっくりしていた。子供の頃に秘密の場所を教えてもらったときの感じを勝手に思い出した。
■もうひとつの展示室では、新展開があった。頭の上に白い“島"を乗せたポートレート。実物の島の彫刻は台座に置かれている。彼女の父母、叔母、姉、友人、そして自分。その人のテリトリーである意志や意識、想像の領域を引っぱり出したイメージ。ユーモラスでいて瞑想的でもある。
■アイデアは以前からあったそうだが、自分のアート活動に、家族や職場の人がいまひとつ距離感を感じている状況に対して、アートは遠いものではないということを伝えたくて、今回の実現に至ったのだという。アートが難しいのではなく、誰にとっても難しいことをアートで考えているということ。それをまずは身近な人に話し、作品の一部になってもらう。公園や会社を背景に被写体になった彼らが、不安と期待を抱えて見に来るのが楽しみだという。
■私もかつて、自分が手伝った展覧会に両親を呼んだことがある。こんな仕事をしながら、身近な人に伝えられないんじゃだめだな、と思って。「これも芸術なの」なんていわれながらも他の観客と同じように案内した。
■誰にでも心のなかに、島はある。波に隠れたり、削り取られて見えなくなっているかもしれないが、頭の先に気持ちを集中させると、むくむくと湧いてきて空っぽな気分になる。ときには、見知らぬ島になっている。自分の島に気づいたら、橋を架けるのは早いのかもしれない。
早川陽子展 "頭の島"
2002年1月21日(月)〜2月2日(土)
マキイマサルファインアーツ
東京都港区新橋1-9-2新一ビル別館2・3F
(地下鉄新橋駅1番出口より徒歩1分)
11:00〜19:00(1/26〜17:00、2/2〜15:00)日休
TEL.03-3569-7227
words:白坂ゆり
球のインスタレーション(部分)
影も空気感を醸し出す
母のポートレート
頭の島
作家ポートレート
2002-01-21 at 02:00 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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