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2001/12/04

伊達伸明展

「ウクレレになった建築物」


art145_04_1展示風景:完成したウクレレの下に、どんな家だったかを記したデータファイルと在りし日の建築物の写真などをいっしょに展示


■建て替えなどで取り壊しになる建築物。長年使われてきた建物には、たくさんの人のたくさんの記憶がしみついている。解体の際に廃材となる建築物の一部を素材にしてウクレレをつくり保存するというのが「建築物ウクレレ化保存計画」だ。この素敵なプロジェクトによって完成したウクレレの展覧会は昨年に引き続き2回めとなる。

■取り壊される建築物の一部を残すために、なにかの形に置き換えようとした。それまでもつくってきた楽器がいい。だれもが手に出来るような、構えなくてもいい楽器を考えた時、大きさといいウクレレがぴったりだと伊達さんは思いついた。現在は京都芸術センターになっている元明倫小学校旧校舎を改装する際に出た壁や床の廃材で、第1号のウクレレをつくった。

■学校あり、個人住宅あり、すでに16本のウクレレをつくってきた。ウクレレとなった建築物はどれも依頼人たちの元で大事に保存されている。今回の展覧会に出品された7本のウクレレにも、いろんなエピソードが、ボディにネックに潜んでいる。大阪府立春日丘高校の音楽室の黒板をボディに用いたものには、グリーンに黄色い5本のラインがある。黒板の5線をひいた部分を使ったのだ。

■仏間や縁側の床板などを使ったウクレレは、写真を見ると「どうしてこの家を取り壊すの?」と目を疑いたくなるような立派なお屋敷のものだった。修道院の階段踊り場の親柱はもともと意匠をこらしたつくりなので、その部分をうまく用いて作っている。どのウクレレも少しずつ形が違う。しかし、見た目だけではなくて、楽器としての音色にも気を配って制作している。

■大学では漆芸を専攻していた伊達さんだが、音を用いたサウンド・アート作品をこれまでにも手がけてきた。建築にもずっと興味があったのだという。作品ファイルと一緒に「支倉 '91」という布張り表紙の写真集が画廊にあった。伊達さんの父親の実家を建て替える前に撮った写真がおさめられている。家族や親戚との思い出のつまった古い家の廃材を一部でも残していれば、と今でも残念でならないのだそうだ。

■今年を計画の第2期としていて、来年からは第3期に入る。計画は継続される予定だ。解体する建築物の廃材をウクレレとして残したいと考える施主は、制作費10万円と、解体場所までの交通費などの実費を支払えば、プロジェクトの一環としてウクレレをつくってもらえる。思い出がいっぱいつまった音を奏でること間違いなし。取り壊しの決まっている貴方の家もウクレレにして保存しませんか?


建築物ウクレレ化保存計画
第2回公開展示
ウクレレ制作:伊達伸明
2001年12月4日(火)~12月16日(日)
アートスペース虹
京都市東山区三条通り神宮道東入
(地下鉄蹴上駅より西へ徒歩1分、都ホテル西隣)
11:00~19:00(最終日~18:00) 月休
TEL.075-761-9238

* 12月15日(土)17:00~
  伊達伸明による作品紹介と小演奏会を催す予定

 

words:原久子

art145_04_2兵庫県立神戸高校の旧校舎の教室や職員室の扉などを用いて作ったウクレレ

art145_04_36世帯が住んでいた社宅のゴミ当番の札がそのまま使われている

art145_04_4聖母女学院修道院の階段の踊り場の親柱は意匠を凝らしたものだった

art145_04_5板についているたくさんの傷

art145_04_6使用した階段の段板などの記録写真

2001-12-04 at 10:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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