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2001/10/13
studio N展、池田光宏展
「信じる境目」
佐藤克久展示風景(以下studio N)
■いま住んでいる家を決めた理由を聞かれると、沿線の電車が好きだからと答えている。それもなんだかだが、もうひとつの理由はもっと気恥ずかしいので口にしたことがない。向こうに白い塔が見えるから。いや、ゴミ処理場の塔なのだが、ラプンツェルの物語みたいに、誰かが幽閉されているような。いや、中は空っぽで幻影かもしれないような。
■studio Nで佐藤克久の作品を見ていたら、それがダブった。ブロンズのカエル、王冠を載せたおたまじゃくしの写真。ごついけどキラキラした輪のジュビリー。マジックミラー。チープだけど、ファンタジックだ。カエルは魔法にかけられた姫か王子かと思ったら、王子の物語のようなメタファーがあった。いや、王子に見えるかカエルに見えるか、アートにはなにかを信じられる力があるのかもしれない。マッチョではないが気概のあるポップ。
■田島秀彦の、牛柄の平面などはアイデアに留まっている印象を受けた。キャンバスにぽつんといる牛もそうだった。が、隣の小さいキャンバスにひしめく牛が薄気味悪く、その空虚感と密集感を対比で見ると、清潔で静かな狂気があるように思った。佐藤の作品もそうだが、すでにあるようでもそれが気にならなければいい。ただ全体に、ちょっとハズした展示は、プロセスを踏んだうえでハズさないとうまくない。空間のマイナス面を反転させるようなら、彼らの作品と相まって見せられたのでは。
■変わって、ドラックアウトスタジオの池田光宏は、建物の窓を透過性のスクリーン替わりにした映像作品。シャボン玉、カップル、バレリーナの動作のシルエットが映る虹色の映像を、内側からプロジェクターで投影し、その模様を外から撮ったドキュメント映像。まるで、中で人が動いている様子が映し出されているようだ。道行く人が足を止めている様子も記録されている。顔は見えないが、コトを把握しかねる気分が伝わる。同時録音の電車や車の走り過ぎる音、風の音も、ここからそこへの臨場感を生む。境目が変わる。
■私が見ていたとき、ちょうど、その窓の家の持ち主夫妻が来ていた。それは池田がよく行く茶店のマスターで、映せる家がなくて途方に暮れていたら、倉庫として空いている家があると快く貸してくれたのだそうだ。ここにも信じる人がいたのだった。
open studio studio N 2001
佐藤克久 田島秀彦展
2001年10月13日(土)〜28日(日)の土日のみ
studio N
国立市青柳356-1-A
(南武線西国立駅より徒歩20分)
TEL.042-526-6981
池田光宏展
2001年10月13日(土)〜28日(日)の土日のみ
ドラックアウトスタジオ
東京都国立東4-27-34-101
(南武線矢保駅より徒歩15分)
TEL.042-577-0807
※studio Nは佐藤克久のアトリエで、今回が初の展覧会。ドラックアウトスタジオは、弟の池田昌紀ら数名で運営しているノンプロフィット(非営利)ギャラリー。今回は事後報告だが、今後も展覧会があるときは告知していきたいと思う。
words : 白坂ゆり
佐藤克久「メモリー・キスミー」
田島秀彦「無題」
大きなキャンバスにぽつんと牛。(部分)
小さなキャンバスにひしめく
池田光宏「by the WINDOW」より。(以下ドラックアウトスタジオ)
池田光宏「by the WINDOW」より。ドアに映写
2001-10-13 at 03:18 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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