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2001/10/20
アンダー・コンストラクション「樹海より」 フィリピン/日本
二名良日「竹やぶ」2001
どっさり積み上げられた竹。これから構築される。
■アジア7カ国の8人の20~30代のキュレーターたちが作り上げようとしているプロジェクト『under construction』。各国を相互に訪れ、実際に美術状況を調査、意見交換を経てきた。それぞれの国でローカル展(通称)を開催した後、最終的に全体を再構築し、東京でひとつの展覧会にまとめ上げる予定だ。
■このunder constructionという言葉は、ネット上でもよく目にすると思う。ご存知の通り「構築中」「工事中」といったような意だが、まさにこのプロジェクトも目下under construction。各国展で、最初にスタートを切ったのが『樹海より』ということになる。(現在、ソウルでは韓国、中国、日本のアーティストがアーティスト・イン・レジデンス中、11月6日から展覧会)
■美術館の入口付近の野外がまるで自然公園とでもいった様相になっている。建物のまえに竹などで作られた“砦"か“秘密基地"のような構築物が、二名良日(ふたな・よしひ)の制作中の作品だ。展覧会日程に間に合わなかったわけではなく、初日から作り始め、会期中ずっと二名と彼のスタッフたちによって手を加えつづけられてゆく予定のようだ。
■なかに入るとエントランスホールに、フィリピンのアーティスト、ワイヤー・R・トゥエゾンのインスタレーション「失われし物たちについて」がある。フィリピンと日本の幼稚園児にインタビューをしたビデオが5台のモニターから流れている。初めて来た日本の地で、トゥエゾンは現地制作に挑んだ。日本の幼稚園児には、いらなくなったオモチャを持ってきてもらい、そのオモチャの話しをきいたのだという。集まったオモチャは、フィリピンの子供たちが描いた絵で包んでいるが、カタチだけを残し石のように硬い。絵を描いた紙の薄茶色、セピア色に編集したビデオ…全体がノスタルジックな空気になっている。
■トゥエゾンのもう一つの作品は、芦屋にゆかりの具体美術協会のメンバーだった田中敦子の作品に捧げる「満開~田中敦子に捧ぐ~」。美術館に隣接する幼稚園児たちとのパフォーマンスを録画したビデオとともに、田中敦子のペインティングもいっしょに展示。
■出品している5組のアーティストを、会場内でつないでゆくのがその使命のように植物をかたどった北尾博史の鉄の彫刻が、さまざまな場所に点在している。ホセ・レガスピの木炭で描いたドゥローイングは、いったい全部で何枚あるのだろう。自画像なのか、人間の深層をえぐっていくような場面が続く。
■車などのエンジン音やその場の周辺のノイズなどを収録し、リミックスしてサウンド作品とするログズギャラリー。彼らは、この展覧会では週代わりで、自動車の提供者とのパーソナルな交流を大事にしながら、週1回のライブのほかは記録を展示している。
■どれをとっても共通点を見つけるのはやや困難な5組の作品。都市、人、自然さまざまなものの深い部分が、樹海に例えられ提示されている。アートの樹海は、足を踏み入れると出口が見出せず、ひたすら延々と歩きつづけなくてはならない。答えも、終わりもでないかもしれない旅を、『樹海より』展でしばし体験してみてはいかがだろうか。
「樹海より」 フィリピン/日本
2001年10月20日(土)~11月25日(日)
芦屋市立美術博物館
芦屋市伊勢町12-25
(阪神電車芦屋駅から南東へ約15分)
10:00~17:00 月休
入場料/大人500(400)円、大高生400(320)円、 中学生以下無料 ( )内は団体料金(20名以上)
TEL.0797-38-5432
●プロジェクト
ログズギャラリー"Residual Noise 残留雑音"
11月3日(土)、10日(土)、17日(土)
●「樹上小屋」へ行こう!
二名良日
11月4日(日)あわじART山/18日(日)
池田市立青少年野外活動センター
* 雨天中止
*各定員30名、参加費\200.-(集合場所までの往復交通費は各自でご負担ください)。
詳細は美術博物館(0797-38-5432)までお問合せください。
words:原久子
ワイヤー・R・トゥエゾン 「失われし物たちについて」2001
ワイヤー・R・トゥエゾン パフォーマンス「~田中敦子に捧ぐ~」 2001年10月20日
ワイヤー・R・トゥエゾン
「満開~田中敦子に捧ぐ~」2001
ホセ・レガスピ 「粘液質」
ホセ・レガスピ 「粘液質」
ログズギャラリー
プロジェクト" Residual Noise / Cars 1-5 "
2001-10-20 at 03:27 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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