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2001/10/02
OBPアーツプロジェクトPULSE01
「事始め:オフィス街での試み」
大阪ビジネスパークは京橋駅と大阪城の間に位置する。手前の双子ビルがツイン21。その間に姿をのぞかせているのがIMPビル
■大阪ビジネスパークは、大阪城の北西すぐの地域に広がるオフィスビル街だ。新宿副都心とまではいかないが、中心部からは少しはずれた位置にあり、ノッポなビルが川辺にたち並ぶ。その一角にあるIMPビルは、地上3階までが店舗、ホール、その上部階がオフィスだ。ここの1〜2階にある9つの空き店鋪を用いて、近畿大学(以下、近大)と成安造形大学の美術を専攻する学生たちが作品を2期に分け展示。オフィス街のなかでの作品の発表を試みている。全体の催しとしては「OBPアーツプロジェクト」ということになっているが、学生参加の事業は「PULSE01 『アーツにスーツ、スーツでアーツ。』」だ。
■1期めの展示作品は近大の学生たちによるもの。造形美術を専攻する約200人の4学年のうち約100人がこのプロジェクトにかかわっているという。彼らが考えたサブタイトルは『ケスクセ』(“ケスクセ"は仏語で「これは何ですか?」の意)。会社員たちの退社時刻狙い、オープニング・イベントとして、IMPビルの隣のツイン21の広い吹き抜けのロビーで、演劇などを専攻する同じ近大の学生たちによるパフォーマンスを披露するなど。スーツのままで、アートに触れてもらえる機会を提供している。総合案内所を設けた部屋では、イベントのこれまでをドキュメントした写真、そして訪れたサラリーマンのポートレイトを撮り続ける学生の写真など、所狭しとピンナップしている。
■公けの場所で発表の経験のない学生たちが、必死で作品をみてもらおうと試行錯誤する姿や、奮闘ぶりが伝わってくる。正直に言って、作品の質にはやや触れにくい部分がある。近大の場合は、まだ入ったばかりの1年から4年まで、発表したいという意志をもった学生たちが自由に参加できる方法をとっているから、これは致し方なかろう。つたない表現であっても、自分の言語で語ろうとする姿勢は、見ている人にも伝わってゆくのではないだろうか。
■会場にいた2年生に尋ねると、このイベントにかかわるという体験によって、これまで積極的に見に行くことが少なかった画廊などへも足を運ぶようになり、どんどん美術に興味が出てきたと答えてくれた。サラリーマンたちが素人だからこそ素直に感じ、学生相手だからこそストレートに言える、そんなコミュニケーションもあるだろう。閉塞気味のアート界には大事なメッセージを含んでいる可能性もおおいにある。今後も<OBPアーツプロジェクト>は、継続していく予定だという。どういうふうに、このプロジェクトが、学生とサラリーマンたちをアートを媒介としてつなぎ、そこでどんな関係が生まれてゆくのか、ゆっくり見守ってゆきたいと思う。
OBPアーツプロジェクトPULSE01
『アーツにスーツ、スーツでアーツ。』
第1期:<ケスクセ>2001年10月2日(火)〜28日(日)
(近畿大学学生による作品展示)
第2期:2001年11月2日(金)〜12月2日(日)
(成安造形大学学生による作品展示)
IMPビル、ツイン21ビル内
大阪市中央区城見2丁目
(地下鉄鶴見緑地線「大阪ビジネスパーク」駅すぐ、京阪「京橋」駅より徒歩5分)
11:00—20:00 会期中無休
入場無料
問合せ:実行委員会事務局 tel.06-6941-0941/パナクリエイト内
words:原久子
吹きガラスのインスタレーション《増殖》(中山幸季ほか計8人の学生の共同制作)
ビル内のサラリーマンたちを撮影している古川智弘。スタッフはお揃いのTシャツを着ている
発泡スチロール、砂、大鋸屑など。物質による感触の違いを足で踏みしめて感じてもらおうという作品《身体〜からだ〜》(庵田雅祐子ほか計18人の学生の共同制作)。
《身体〜からだ〜》では、さまざまなワークショップも会期中に開催。訪れた人が、窓に張った透明な素材に、好きなことを描けるようになっている。
2001-10-02 at 11:14 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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