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2001/09/25

飯沢康輔展

「揺れる水」


art141_01_1展覧会「かくも永き不在」より、青い空間


■ホワイトキューブのいつもはふさいでいる先に、細い通路ができていた。曲がると、青い光に包まれた小さな庭のような空間ができあがっている。白い砂利を敷き詰め、飛び石が並んでいた。見上げると、少し湾曲させた透明の厚手のビニールに青く着色した水が溜まり、ライトの光でゆらゆらしていた。その日は雨が降っており、雨粒で絶えず動きを見せていた。

■そこは、建物の、天井吹き抜けの空間に呼応する、エアポケットのような場所。1階の排水溝から雨が流れ落ちるように設計されている。地下1階のギャラリーからは、いつもは窓ごしに見える、中であって裏手のような場所だ。そのスキマにできた今回の異空間は、居心地がいい。寝転がると砂利が冷たい。肩の力が抜け、しゃんとする。

■彼のこだわりは「水」だ。人間の体内の内なる水が、外の水と引き合うのだろう。水には鎮静作用がある。そして、青色にも。ダブルの効果だ。

■もうひとつは「場所性」。ここでしかできないものをつくること。前回の個展では、ギャラリーがマンション内にあることを考え、ギャラリー空間のなかに2階建ての住居をつくった。畳の真ん中に囲炉裏のように、水が張られ、ひしゃくで水面を揺らすと、下でリアルタイムで捉えた波紋の映像が、上のモニターに映るというものだった。

■前回は人為的な変動で、今回は自然の動向に任せている。昼は外光のみで、表情が変わる。ともすれば、街のリラクゼーションルームと同じになりかねない危うさもあるが、そこは、作品と人のあいだに起こる振幅の違いだろうか。彼の作品は、「水」自体は確かにいちばんの要素だが、「揺れ」の反復作用のもたらすものが大きい。そして、一期一会的な、生じる側から消え去ろうとする動き。それは、日本文化がとうに心得てきたものだと逆に思い至るのだった。

飯沢康輔展
2001年9月25日(火)〜10月6日(土)
時限美術計画/T.L.A.P
東京都渋谷区神宮前4-17-3アークアトリウムB-02
(地下鉄表参道駅A2出口よりナディッフ先の角を右折、美容院の角を左折、ひとつめの角 を右へ。徒歩5分)
12:00〜20:00(最終日は〜18:00)
無休
TEL.03-5775-2469

words : 白坂ゆり

art141_01_2日本庭園のような飛び石

art141_01_3見上げるとプリズム

art141_01_4コンクリートの壁に揺れる光の流動性が、深海を見るような不安さも垣間見せていた

art141_01_5外光のみの夕刻の写真

art141_01_6同じく夕刻

2001-09-25 at 11:51 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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