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2001/06/23

多田正美展-起

「祝祭の音・光」

135_01_11F。サウンド・エンカウンターで使うものがインスタレーションされている。

■昨年12月、15年間続いた吉祥寺の双ギャラリーがクローズした。オーナーの塚本豊子氏が自宅を改造して新しいスペースをつくりたいという長年の構想を、世紀の節目を機に実現化するためだ。吉祥寺にオープンして早々に、もの派の展覧会や、森村泰昌と多田正美のパフォーマンスなど話題を呼んできたギャラリー。スペースが引っ越して初の本格的オープンは、15年間画廊と歩みを並べてきた多田正美で幕を開けた。初期の頃の多田が、音ができるたびに送ってきたりした当時の熱気が伝わるような話も 聞いた。突き動かされる衝動と、引いたクールな眼をあわせもつ作家だと彼女はいう。

■郊外の画廊は遠い分、広いスペースでのんびり見られる。3階建ての建物は、外観も住宅街に溶け込みつつ、さりげなく際だっている。近所の人もよく訪れるそうだ。1階はホワイトキューブで、2階のリヴィングはサロンのようだし、3階の少々プライヴェート感漂う和室と寝室にもインスタレーションされている。それぞれ空間での作品の見え方が心地よい。ガラス窓に描かれたドローイングは、青空が背景となり、特に朝は光の軌跡と連なって美しいらしい。余談ながら、2階に上がると川の干上がった跡が下に見られ、これが貨物列車の通 り道のような、珍しい風景。

■竹林の中に入り込み、デジタルカメラで撮影した写真は、絵の具で描いたように厚みを増した光の軌跡が静かな迫力。静止画ではあるが、時間はとどまることを擦り抜けて気持ちよく脱走を続けているようだ。映像もその空気がまるごと押し寄せたり、引いたりしている。

■この空間で、「サウンド・エンカウンター」というサウンド・インプロヴィゼーショ ン(即興)が行われる。ビデオ映像と電子音、自身の身体にカメラを付けて激しく動きな がら、映像もつくり出す。一期一会的なエネルギー。竹をまきつけ、転んだりもしなが ら……。その ビデオ画像から身体を転写し、電気ごてで写真の表面をひっかいて溶かしながら描いた 「エレクトリック・ドローイング」は2階に展示されている。青空と人が対等に溶け込ん で存在している。

■彼の音を空間で聴き、映像や写真を空間で見ていると、世界の美しさ、生きていることへの祝いや祈りなどが肌で感じられ、自分も樹々のなかで無性に転がってみたくなる。

多田正美展
2001年6月月23日(土)〜7月22日(日)
双ギャラリー
東京都小金井市緑町2-14-35
(中央線東小金井駅より法政大学工学部方面へ、徒歩15分)
月火休 13:00〜19:00
TEL.042-382-5338
※7/7(土)16:00〜サウンド・エンカウンター 予約制

<ライブ情報>
※7/14(土)18:30〜「Marginal Consort '01」 
法政大学学生会館大ホール 2500円(カ ンパ制)
出演:多田正美/今井和雄/椎啓/小沢靖/越川知尚
問い合わせ:TEL.03-3264-9470 法政大学事業委員会Rocks→Off
※8/25(土)15:00〜19:00「音連れの余韻〜響きのサーカス」 
谷中会館初音ホール 3000 円(当日3200円) 
出演:藤枝守/多田正美/作間敏宏/牛島達治/他 
問い合わせ:TEL.045-712-0899 Bゼミ・コーポレーション

words : 白坂ゆり


135_01_2「北矢名」「南矢名」シリーズより

135_01_32Fリヴィングに展示

135_01_4竹の中にサウン・ドエンカウンターのビデオ。手前には天井へ延びる巨大な糸巻き。

135_01_5階段に「エレクトリック・ドローイング」

135_01_63F ベッドの上には、かつてパフォーマンスで使ったオブジェ。天井や壁にドローイング。

2001-06-23 at 09:33 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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