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2001/06/01

上瀬奈緒子展

「2つあることで互いに確認できること」


img alt="133_03_1" src="https://bluemark.typepad.jp/yuran/images/133_03_1.jpg" width="200" height="145" border="0" />左)「The man goes to the next room」(2001)、右奥)「自らの影を踏もうとする人たちへ」(2000)


■2室の会場に、16点の作品がかなりぎっしり盛りだくさんに展示されていた。どの作品も「謎解き」をしながら見て前に進んでゆくようなところがある。この展覧会は上瀬奈緒子の初個展だ。一貫したコンセプトが根底にあることで、展示の方法にはやや疑問も残るが、全体にはまとまりのある展覧会となっている。

■扉を開けるとまずそこにある一室めより、二室めに目がいってしまう。なぜならそれは、額縁のなかに赤いLEDのカウンターがついているからだ。そちらの部屋に吸い寄せられるように入ってゆくとカウンターの数字が1つ増えた。もう一度戻ってから部屋に入りなおすとまた増えた。出入口の頭上にビデオプロジェクターがあることを確認。床を見ると「For the people who will step on their own shadow」「自らの影を踏もうとする人たちへ」という文字が映し出されていた。カウンターのついた額縁のなかにも同じ言葉がある。額縁に入った作品に近づくために、なるほど自分の影を踏みながら歩き、この言葉を読むことになる。

■フォークに突き刺さったま一列に並んだリング・ドーナッツ20個。お約束のように端ッコのドーナッツに近づいて穴を覗き込んでしまった。そして、一つのドーナッツの向こう側の壁に貼られたクマのシールを再び穴の間から覗き込む私。花柄のハンカチのうえに白い布を置き、下から透けて見える柄を模写 した絵画などなど。人とモノであったり、モノとモノであったり、時間であったり、2つの事象を対峙し、比較しながら、それぞれが互いに存在することを認識できるような作品をつくりたいのだと上瀬は云う。何かと何かの間をつなぐものを、見えるかたちに作品化することをしてゆきたいとも。

■歩道のうえに「Luzy Sombra」(スペイン語で"光"と"影"という意味)という文字が影で描かれたインスタレーションの写真が個展の案内のカードには使われていた。メキシコでのグループ展の際の現地で制作した野外作品だそうだ。 私の元へ沢山届くカードのなかでも目をひいた。はじめて名前を見るアーティストの個展だったのでどんな作品に出会えるのかワクワクしながら出掛けてきた。私とカードの間にあった何かをこの会場で確認できたような気がした。


上瀬奈緒子展  
2001年6月1日(金)〜6月10日(日)
立体ギャラリー射手座
京都市中京区三条木屋町東入るフジタビル地階
11:00-20:00 月休
入場無料
TEL.075-211-7526

words:原久子


133_03_2左奥)「自らの影を踏もうとする人たちへ」(2000)、右)「The man enters t his room」(2001)

133_03_3「自らの影を踏もうとする人たちへ」(2000)

133_03_4手前)「穴」(2001)、奥)「フォーク、ドーナッツ、くまスター」(2001)

133_03_5「They are embracing each other」(1998)

133_03_6「at least」(2001)

133_03_7「untitled」(2001)

2001-06-01 at 09:11 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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