2001/05/28
版画再考
「版画家の問題意識を提示」
会場風景
■一見、そう目新しくない版画のグループ展。モチーフやテーマ等で括られているわけではないので、作品群から全体のコンセプトは見えてこない。企画の軸にあるのは、「版画を再考する」ことなのである。
■版画に携わる三作家、渋谷和良・林孝彦・山口啓介が勉強会のかたちで発足した会によって、この展覧会が実現したという。30名弱の版画家にアンケートを実施し、その回答と作家の作品を会場に併設している。
■このアンケートがなかなか手ごわい。細かな設問まで数えると40問くらいある。しょっぱなから「肩書きは何か?」「版画を制作する動機は?」と、日常あらたまって聞かれることがないであろう問いかけで、作家たちの意識を確認する。肩書きに関しては、版画家と答えた人は思ったほど多くなく、美術家や造形作家と名乗っている作家が目立った。
■読み進めていくと、結構コアな質問が待ち構えている。「日本の美術に問題があるとしたらそれは何か?」「今日の日本の版画に問題があるとしたらそれは何か?」というものだ。すかさず、「それは誰(何)の問題が大きいと思われますか?」と続き、評論家、美術館、画廊、作家、コレクター、マスコミ、教育制度等の選択肢から要因の大きい順に5つ選ぶようになっている。
■特に関心を持ったのは、「版画の定義」である。木版、銅版をはじめ、印刷、コピー、写 真、CGの項目が横一列に並んでいて、どこまでを版画と考えるか?というものである。これは作家によって見事に意見が分かれていた。版表現の境界線については、個人的にも大いに興味があるので、この質問の存在には感謝した。
■なにはともあれ、作家たちが実名で真摯に回答していることが、この展覧会の最大の見どころである。展示されている版画作品は新近作が並んでいるので、回答のファイリングとつき合わせてトータルに眺めてほしい。そして、出品者たちの問題意識が、鑑賞者らの「再考」につながればいい。会場ではもろもろの回答を収録したカタログ(1000円)も販売されている。
版画再考
2001年5月28日(月)〜6月16日(土)
文房堂ギャラリー
東京都千代田区神田神保町1-21-1文房堂ビル4F
( 地下鉄「神保町」駅、徒歩5分)
10:00〜18:30 日休
無料
TEL.03-3294-7200
※ギャラリートーク
6月9日(土)「対話/学生と作家/版画の現状」I WALK 2001参加作家 14:00〜16:00
6月16日(土)「70年代と現在」滝沢恭司×清水美三子×横山智子14:00〜〜16:00
words:斎藤博美
岡部昌生「ヒロシマからの9つの手紙」
渋谷和良「The Landscape」
作家のファイルを自由に閲覧できる
会場にはイスがあるのでじっくりファイルを読むこともできる
2001-05-28 at 09:06 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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