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2001/06/01

松田隆作展

「はかない美」


134_02_1なまめかしい唇作品。バラの花びらで色づけられている


■作品と対面した時、第一印象で惹かれることも少なくない。ただならぬインパクトがあったり、「?」と思わせる演出、意外性のある作品が個人的には好みである。今回、事前にリーフレットを見てから出かけたのだが、薄明かりの会場に入った時、ドキッとするものがあった。

■そこには、水分を失いドライフラワー化した花びらでかたどられた大胆なカットのドレスが3体、3つのベッドでくつろいでいる。その脇にはピンク色をした巨大な卵。入り口付近の壁面 にはなまめかしい唇のレリーフ。いずれもバラから抽出した絵の具で鮮やかに彩色されている。バラとドレスと唇。どれも女性を象徴するシロモノではないか。素材はすべて深紅なるバラということか。ベッドの脇のチェアーの座面 はバラの刺で覆われていた。毒気も忘れていない。

■この作品の作り手である松田隆作氏はフラワーデザイン界で活躍するアーティスト。植物を素材にアート分野でも作品を発表しているらしい。ドライフラワーは生花よりは長持ちするとはいっても、つまめばすぐに粉々になってしまうはかない素材である。1994 年制作のドレスとのことだが、持ちの良さに驚いた。花びらは全体に褪色していて、時間の経過を感じさせる。最後は土に帰りあとかたも無くなるだろう。

■常に崩壊と隣り合わせにある「はかなさ」がこの作品の魅力なのだと思った。時とともに作品は変化し続け、華麗な色彩 が抜けていくと同様に、危険な棘もくだけるだろう。しょせんこの世ははかないもの。美も命も同様にはかないことを示唆するメタファー的作品に、やけに惹かれてしまう自分がいた。

花びと 松田隆作
2001年6月1日(金)〜6月22日(金)
GALLERY MAKI
東京都中央区新川1-31-8ニックスハイム茅場町402
(地下鉄「茅場町」駅3番出口徒歩7分)
12:00〜19:00 日休
無料
TEL.03-3297-0717

words:斎藤博美

134_02_2会場にはベッドが3台。それぞれ空洞のドレスが…

134_02_3一番奥のベッドには見えない女性が座っている

134_02_4チェアーの座面はバラの棘

134_02_5この唇もバラの棘

134_02_6横たわるドレス

2001-06-01 at 09:19 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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