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2001/05/12

FILEDWORKS展

場と人」


133_01_1カトリン・パウル「East of the River」左の女性には、近くの蕎麦屋「菊元」で会えます。


■アートが街に出て、それが街にとっても新たな発見になることは幸福なことだ。でも、街おこしの目的が先に立ち、お金も降りるし、事業計画としても美しいしで、そこにアートが当てはめられていく中で、作品にとって不幸なケースも生まれてきているように思う。

■そんななか、本展では、アーティストが街に住んだり、街と出会うなかで、つくりたいものとやりたいことがあり、俯瞰的に見通 された理論も持ちつつ、現場に応じて転がっている感じが思索的で実験的であり、なにより自由だ。

■ドイツから奨学生として日本に滞在中のカトリン・パウルは、現代日本における女性イメージを写 真で追求している。彼女の撮るコギャルや巣鴨の老婦人も新鮮だったが、今回の墨田区の“働く女性"では、顔や手足などのパーツが再構成されたユニークなイメージ。顔が大きくて手前に出ていたり、デコボコしているのは、自分の視線の優先順位 なんだそうだ。向島は、家内制手工業が多い下町なので、手のアップと顔の組み写真もあった。

■同じくドイツ出身のティトゥス・スプリーは、畳一畳分の移動式オフィスを引いて、街中を移動するプロジェクト。オフィスの窓からの眺めが変わるという発想は、「モバイル時代」の現在ならでは。カトリンのテーマが「人」なら、彼は「場」に「場」が持ち込まれて、「人」が出会うといったところか。会場では、昨年のプロジェクトの記録を、素通 しの和室を構成したような畳の空間で、縁側気分で眺められる。登場人物は、1920年から続いている町工場の主人、子供やホームレスの人々などなど。

■最後はa-works(長村貴之、篠はら真基、カナダ出身のジャン・ルイ・リヴァード)。自転車の荷台にビデオカメラを据え付け、向島の同じ道を3つの異なる時間と高さで撮り、3分割に構成した映像「トライシクル」では、思いがけない風景に出会える東武電車に乗り合わせた人の顔をこっそり撮り、同じく3分割にして再構成した映像は、ホラーっぽくもあり、おもしろい。また、顔を映しているのに、車内のゆるい空気が見えるようだ。彼らの「自分が主体ではなく、風景が動いているなかに自分がたたずんでいる。眼前の風景やものが通 り過ぎていく。東京を歩くのではなく、東京が歩く」という「場」の考え方が私は好きだ。今後の突破口になると思う。

■私がこの展覧会を見た日は、祭りが行われていた。夕方の風が気持ちよかった。


FILEDWORKSそれぞれのフィールドワークス
2001年5月12日(土)〜6月30日(土)
現代美術製作所
墨田区墨田1-15-3
(東武伊勢崎線東向島駅より徒歩3分)
12:00〜19:00(土日〜18:00) 月火・6/10休
TEL.03-5630-3216

※6/23(土)15:00〜18:00体験ワークショップ「マイクロ・オフィス」で街に出てみよう! 墨田区向島界隈で実施 講師:ティトゥス・スプリー 定員10名(参加費無料・要予約)
※「メイド・イン・すみだ 鳥光桃代と町工場展」(浅草駅5分・すみだリバーサイドホール)にも足を伸ばそう。
TEL.03-5608-6430

words : 白坂ゆり


133_01_2ティトゥス・スプリー「モバイル・マイクロ・オフィス」日記。雑誌も置いてある

133_01_3チープな素材で造形的、風情もある「モバイル・マイクロ・オフィス」。180×90?と大きいが、思ったより軽い。

133_01_4a-works「トライシクル」より

133_01_5a-works「トライシクル」より

133_01_6a-works「hakuchuum[WAKING DREAM]」

2001-05-12 at 09:03 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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