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2001/05/14

竹野美奈子+児玉幸子

「とんがった液体に拍手、あるいは、拍手でとんがる液体」


■液体がとんがる瞬間って見たことある? だいたいそんな思いもよらないこと、フツーは考えないか。撥ねる液体が造形的なのは知ってる。撥ね上がる瞬間が王冠のようになった写 真を見たことがあったから。でも「とんがる」っていうのは前代未聞だ。だから見たときは目を疑った。不思議すぎる現象だからだ。

■目撃したのはパラグローブというオルタナティブスペース。3つのエピソードによる「ZONE」という展覧会が4月から開催されていて、ラストを飾る竹野美奈子+児玉 幸子のコラボレーション展がその現場である。明るい展示室の中央にはテーブルセットが設置してある。床には岩塩が敷きつめてあり、全体が白でコーディネートされている。テーブルに近づきたくてサクサクと岩塩の上を歩いていく。どこにも「座らないでください」等の注意書きが見あたらないので着席してみる。向かいの席には誰もいないのでちょっと寂しいが。

■座って、テーブル上に整然と並べられた皿やグラスを眺めてふと考える。これから何か起こるのか。テーブルの上中央には大皿があり、そこには黒茶色をした濃厚そうな液体が入っている。これがきっとどーにかなるはず。とりあえず息を吹きかけてみる。水面 が少しうごくだけだ。何気なくテーブルの下をのぞいてみる。テーブル面の裏側には四角い筒のようなものが付いていた。仕掛けの臭いがプンプンするではないか。いずれ決定的瞬間が訪れるだろうという期待からとっさにカメラを取り出す。テーブルに置いた時、液体の表層が一瞬とがったのを見逃さなかった。

■今のは何? もう一度見たい! とっさにカメラをテーブルに置き直す。すると水面 の中央からハリネズミのような円形の突起が今度はし?かりと表れた。ひぃぃ。とっさのことで硬直する。それはすぐに平になってもとの水面 に戻ってしまったが、音に反応することがわかった。ここぞとばかりに手を叩いてみる。やっぱりそうだ。面 白いぐらいに液体が反応する。連続して叩けば突起が出た状態を維持できることも発見。私は手元にあった花器、ワイングラス、ナイフやスプーンを次々に持ち替え叩き続けた。ピンとした無数の突起がくっきりと表れては消えていく様子が生きもの的で、楽しくてなかなかやめられない。造形的な面 白さもしかり、液体という素材の意外さも手伝って、しばらくは至福の時間だった。

■ちょうど作家の竹野美奈子さんが来廊したので、話を聞くことができた。彼女は目に見えない磁力に興味をもち、その視覚化に取り組んできたという。あの不思議な液体の動きは、実は磁気で動いていたのだ。最近は児玉 幸子さんと組んで、電子制御を取り入れたインタラクティブな作品(=音に反応する液体)を制作している。それにしても「目を見張る不思議さ」をもった希に見る作品である。食卓で語らう人々の会話に合わせて皿の液体がうごめくのを想像するだけでもワクワクするではないか。非日常的で魅力ある光景を作り上げた竹野・児玉 コンビに拍手を送らずにはいられない。(あっまた動いた!)

ZONE Episode 3 竹野美奈子+児玉幸子
2001年5月14日(月)〜5月29日(火)
パラグローブ
東京都杉並区和田3-54-5第10田中ビルB1
(地下鉄丸ノ内線「東高円寺」駅、徒歩5分)
13:00〜19:00(金・土曜は〜21:00)無休
無料
TEL.03-3315-6950


words:斎藤博美

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薄暗い通路を抜けて展示室へ。そこには白いテーブルセットの「pulsate」という作品があった

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テーブルの上の大皿に黒い液体(磁性流体)が

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大皿の液体がとんがりはじめる

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これが液体がとんがる決定的瞬間だ

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カップ&ソーサーにはずっととんがっているコーヒーが

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2001年8月、SIGGRAPH2001(ロサンゼルス)で発表される「protrude, flow」

2001-05-14 at 01:17 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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