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2001/04/01

藤原靖子展

「ホシイもの、サガシもの」


e_01_1「セピア」(以下すべて2000年)


■「ホシイものはなんですか?」と題された展覧会。誰もが見たことのあるデザインのモノが、ダジャレ・パンチを効かせて再現されている。1枚1枚思い出の刷られたティッシュペーパー「セピア」、個人情報誌「ぴゅあ」……。ビデオの中では左右大きさの違うバスケットシューズ「ALL☆阪神巨人」や、阪神の応援グッズを収めた辞書型の「甲子園」というのもあった。さすが'77年大阪生まれだ。

■よく見ると箱に書かれた文字も変えられていて、たとえば記憶を収めた「セピア」では「思い出は水に流せるものではありません」「ワスレジョーズ うつくしい思い出さえもこれでペシャンコになります」などと細部に渡って手が加えられている。私たちは、ティッシュやタバコに代表されるように、物欲に歯止めが効かず、時には欲しいかどうか考えもせず、むやみにモノを消費している。

■情報はモノの消費に荷担し、ましてや情報自体がめまぐるしく消費されている。将来なりたかった職業を表紙にした「ぴゅあ」では、出生から現在までが綴られているが、自分さえ消費しかねない社会で、存在について考えさせられる。作品は全体に、モノに積み重ねられてきた時間や記憶を拠り所としているようだ。

■しかし私は、そうしたパロディやメッセージより、丁寧なつくり込みそのものに感心させられた。パッケージを手描きしたり、写真をシルクスクリーンにしたり、ひとつひとつの手仕事が、本来はモノが幾多の人の手の中でつくられ、渡されてきたかを想起させる。現実にたとえ機械による大量生産であっても、原材料をつくったりデザインやコピーを考えたり、売る人がいたり。そしてモノは人のかけがえのない思い出を連れてくる。しかし、思い出ははかない。だからモノはもとより短命で、人間と同じようにサイクルする宿命だともいえる。だからこそ、大切にということか。

■ところで自分が「ホシイもの」ってなんだろう? 時間かな、愛かなー(笑)どうやらモノじゃないみたいだ。

藤原靖子展-ホシイものはなんですか?
2001年4月1日(日)〜5月15日(火)
プラスマイナスギャラリー
東京都中央区銀座6-11-1TEPCO銀座館2F
(地下鉄銀座駅、松坂屋裏手)
10:30-18:30 水休
入場無料
TEL.03-3575-0456

words : 白坂ゆり


e_01_2作家自身の思い出の写真や言葉がプリントされたティッシュペーパーが詰まっている

e_01_3「愛煙家の見る嫌煙家の視点」より。「わかげ」中はロケット花火 「ego」中はピロピロ笛。ボタンを押すと音楽が流れる、タバコの自動販売機ならぬ 「自動反抗機」も。

e_01_4「ぴゅあ」

e_01_5展示風景

e_01_6「Clapton」ティーバッグには"SLOWHAND""ANTHOLO-TEA"の文字が。1Fカフェに合わせた展示。東京電力のエネルギーやエコロジーの展示のある5Fにも作品あり。

2001-04-01 at 12:03 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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