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2001/03/01

ex-カチョー×ヤノベケンジ展

「物語をつくる」


art128_01_1カチョー「Para Olvidar(忘却のために)」
2000年

■いま話題の深作欣二監督が「15歳で日本の敗戦を経験し、国の崩壊を目の当たりにしながら、死体処理をさせられた」と答えているインタビューを読んだ。これほどショッキングな出来事はないとしても、今はまた別の形でじわじわと社会や制度はひび割れている。私の考えが、まったく社会や制度に捕らわれていないはずはない。自分の判断をどのように持ったらよいのか不安になることもある。

■リニューアルした資生堂ギャラリーで、第一弾の「ex- カチョー×ヤノベケンジ展」が行われている。「ex-(エクス)」とは、「外へ」などの意味をもつ接頭語。ヤノベケンジは、未来の廃墟となった大阪万博跡地で遊んだ経験から、生き残ることをテーマに作品をつくっている。ガイガーカウンターをつけたアトムスーツを着て、チェルノブイリを探索した彼は、今回は幼稚園の廃墟にあった人形と太陽の絵をヒントに、被爆した人形が巨大化し、立ち上がるというインスタレーションを行った。放射能を感知してガイガーカウンターが10を数えると、巨大オブジェがゆっくりと立ち上がり、再び元の姿勢にかがんでいくというもの。見上げた太陽からはシャボン玉が、たくさん出ては空中に浮かんで消えていく。

■キューバ生まれのカチョーは、古い木材や廃品のタイヤを使った桟橋のインスタレーション。桟橋の周りは、海に見立てた空き瓶でいっぱいだ。奥の部屋には、再生のために壊した舟「Violencia concepto especial」がある。暴力的な特別なコンセプトという意味だそうだ。今回のふたりの作品は「物語の復活」を唱えている。確かに、私達には、自分で自分の人生を生き抜くために、新しい物語を生成する力が必要だ。舟の舳先をどこへ向けるか、誰かや何かに決めてもらうのではなく、自分の感覚を磨かなくては遭難しかねないといっても過言ではないだろう。

■スペースは2つに分かれており、奥の部屋は物語の“破壊"、最初と最後は物語の再生(再構築)の部屋を通過することになる。私はさらに、破壊と再生は反復するという現実を認識し、より強くなろうとする物語として(シャボン玉も生まれては消えるし)、受け取ろうと思う。

ex-カチョー×ヤノベケンジ展
2001年3月1日(木)〜4月15日(日)
資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3東京銀座資生堂ビルB1
(地下鉄銀座駅、中央通り沿い)
11:00-19:00(日祝〜18:00)
火休 入場無料 
TEL.03-3572-3901

words:白坂ゆり

art128_01_2ヤノベケンジ「ビバ・リバ・プロジェクト-スタンダ-」2001年最初は手足をついてかがんでいる。鏡面に自分が映る。

art128_01_3少しずつ姿勢を変えながら。

art128_01_4立ち上がり、首が据わる。また少しずつ元へ。インパクト大!

art128_01_5発光する太陽(ライトボックス)と向かい合う。

art128_01_6ヤノベケンジ「アトムスーツ・プロジェクト-チェルノブイリ 保育園4-」1997 年

2001-03-01 at 10:09 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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