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2001/02/09
Photography ―写る・写す―(後期)
「7人の目がとらえた現在」
奥野千明作品
■ 今回の展覧会に出品している作家のほとんどが70年代に生まれている。彼らにとっての写真は、絵筆の代わりにファインダーをのぞきシャッターを押す、そのレベルのことのようにも思える。この世代のアーティストたちにとって、写真というメディアが、特別なものであり続けているとは考えがたい。勿論、マテリアルへのこだわりはどんなメディアを用いるアーティストにもあることだ。
■しかし、写真というのは、美術のなかでも、少し異なる位相のものとしてこれまで扱われてきたように思う。たかだか100年ほどの歴史しかもたない…いやそれだからこそなのか。彫刻・絵画という分け方とは、また別に、写真という違うジャンルのものとしてとらえられてきたようだ。「美術評論家」という肩書きは聞いても「彫刻評論家」とか「絵画評論家」という肩書きは聞いたことがない。しかし「写真評論家」は存在する。
■ この展覧会には、それぞれまったく違ったテイストの作品が集められている。しかし、どの作品についても、「記録」という写真の機能の大きな要素の一つからはずれるものではないことに気づく。勝又は火を大事な要素として用い大地や空間を見つめ、辰巳は刺青を通して身体の美しさや複雑な図柄の技を見つめる。荒蒔は日本的風景を切り取り、澤田は現代の女性のさまざまな生き方を、自らが扮して「証明書写真」というフレームのなかにおさめる。いずれも風景や人・風俗を通して時代を記録している。
■ 美術は時代を写してゆくものでもある。写真もその一つだ。ここでは若い7人の目がレンズを通してとらえた時代がある。直接的に、時間や空間を写し出す「写真」は、やはり、絵画などとは異なるはっきりと表現媒体なのか、という問いが、頭の中をまた駆け巡りはじめた。
Photography ―写る・写す―(後期)
2001年2月9日(金)-2月22日(木)
大阪府立現代美術センター
大阪市中央区大手町3-1-43 大阪府新別館
(地下鉄谷町線、中央線「谷町四丁目」駅下車)
10:00-18:00 (土-16:00)
日曜日休 無料
TEL.06-4790-8520
辰巳卓也作品、入れ墨で描かれているモチーフの面白さにも興味がわいてくる
荒蒔綾子作品(部分)、河原のゴルフ練習場は延々と横に広がっている
山中葵作品(部分)、様々なアパートのベランダで構成されている
勝又邦彦作品
浅田暢夫作品、自らが海のなかに入って撮影をしているという
澤田知子作品、全部アーティストのセルフポートレイト
2001-02-09 at 10:07 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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