« Photography ―写る・写す―(後期) | メイン | 渡辺英司新作展 »

2001/02/18

クリニック

「人それぞれの処方箋」


art126_01_1会社の会議室が、待合室と診察室に変身! 備品の蛍光ボードに、医師(作家)名を表示


■アーティストがドクターになり、自覚症状のない来院者(観客)を診るという展覧会。説教くささもなく、観客の年齢層や現代美術体験の有無を問わない好企画だった。

■看護婦姿の受付の女性から、問診票を渡されて記入。希望する医師の指名もできる。カーテンで中が見えない大巻伸嗣の診察室では、まず顔のコピーをとる。次に絵の具をはさんでつぶした丸いガラス板の中から好きなものを選び、連想する言葉を書く。さらに好きな色と嫌いな色の色鉛筆を選び、自分が書いた言葉から問答が繰り返されていく。たとえば「額のしわ」「しわって何?」→「刻まれた時間」「時間って何?」とか……。希望者には、絵の具を調合したガラス板が薬として渡される。好きな色も嫌いな色も混ざり合ってこそ美しい。また、いきなり自分の深層を知るのは苦しいので、時間を置いて診断票のコピーが届けられるそうだ。

■木村崇人の診察室は、ガラス越しに見えてワクワク感を誘う。「アイチェンジャー」という両目の位置を変える装置を装着し、見えるモノの遠近感を変えたり、ビルが立ち並ぶ窓からの風景を後ろの鏡に映った風景と合わせて見ると“巨人の視点"が得られるのだった。薬は携帯用アイチェンジャー。

■高安利明は、音のコラボレーション。患者が風景のポラロイド写真やトランプを選び、あらかじめプログラミングされたカードの番号の音を出し、重ねていく。自然音や街のざわめき、ミニマルな音。中には、相手の選んだカードで音を消されることもある。そのやりとりを生録した音をCDRに焼いて渡す。はじめて会った人同志が、偶然そこでつくった作品と共有した時間が再生できる薬だ。

■増山士郎の診察では、まず小部屋で待ち、呼ばれて診察室に入るとさきほどの小部屋での自分の行動がスクリーンに大写しに。素の状態の患者を録画しながら診察してしまう、あえてコミュニケーションを取らないアプローチ。

■来院者が多すぎて、大半が診察を受けられなかった運営の仕方には問題が残る。が、最後にまとめて各ブースの説明を聞く中でも、特に大巻の診察は複数でやると意外な答えも聞け、終始なごやかだった。今日の薬がそれぞれの日常で効いていき、また別の薬を探しに行ったり、自分でも薬がつくれるようになるといい。本当に。

クリニック
2001年2月18日(日)・25日(日)
株式会社エイチ・アイ・エス会議室
東京都渋谷区道玄坂1-12-1渋谷マークシティウェスト12F
12:00〜16:00
入場無料(薬は各300円)
TEL.03-3704-1660 ヒンジプロジェクト

words:白坂ゆり

art126_01_2大巻伸嗣の診察風景

art126_01_3診断票と、アクリル絵の具を調合した"薬"

art126_01_4木村崇人の診察風景。"人体の宇宙"から楽しく視点を広げる

art126_01_5普段着で音のコミュニケーションを語る高安利明の診察風景

art126_01_6増山士郎作品。鏡やカレンダーなどがある小部屋

art126_01_7診察室に入ると、落ち着きのない自分の映像がっ!

2001-02-18 at 10:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d015432c74ab0970c

Listed below are links to weblogs that reference クリニック:

コメント