« クリニック | メイン | 4つのテーマによる4つのグループ展 vol.2 »
2001/02/22
渡辺英司新作展
「ロマン飛行」
■渡辺英司展の会場に入る。まず目についたのは、少々イビツな恐竜模型の石膏彫刻。見渡せば壁面や床にタイプの違う作品が整然と並んでいる。だが、こぎれいにまとまりすぎていて、しばらくは馴染めなかった。とにかく順番に見ていくことにしよう。
■右壁面のブタの皮を使ったという作品は、樹脂のようでブタの面影はない。だがそれとなく動物の形をみてとれる。その隣には同じ素材を使ってキャンバスに仕立ててある。布ならぬブタ皮のキャンバス。「再生」がテーマになっている。指で叩いたらボンゴのようにいい音がしそう。
■次に目に入ったのは透明なグラス。表面には飛び込む人をモチーフにした絵が描いてある。少量の水が入っていて、ちょうどその水面に向かって飛び込んでいるように見える。聞けば、ローマ近郊にある遺跡の石棺のフタの裏側に描かれていた絵を模写したそう。なんとも繊細かつデザイン的にもステキな絵で、つい覗きこんでしまう。
■写真作品もあった。どれも高速道路等を走っているトラックや乗用車のテール(後ろ)ばかりを撮ったもので、どうやら運転しながら撮影したようだ。タイトルは「怒りのドライバー」。なるほど、悪質な車に〈怒り〉を感じた瞬間、パチッとやったのだろう。ドライバーなら少なからず遭遇する体験だ。よく見ると作家がパッシングしているのがわかる。
■50円切手のシートを裏返して、1枚だけこちらを向かせた作品。その名も「後ろの正面」。全部で100枚だから単純に5000円分の切手であるが、作品価格はその10倍以上する。ウィットに富んではいるが、原価が明確すぎて購入をためらわせやしないだろうか。…とふと考えてしまったわけだが、材料費と作品プライスの関係をも想起させる作品である。
■この会場へ足を踏み入れて、作品を堪能するには少々時間が必要だろう。それは、強烈なビジュアルで引き込む荒手な作品とは対照的な、静かでコソっとした気づく人だけが気づくような世界だから。そのようなコンセプチュアルな作品は「現代美術ってよくわからない」的意見を生む要因になっていることも事実。だけど、何かきっかけがあれば、思いがけないことに気づいたり、知らない世界へトリップできる可能性もあるのだ。入り口のところに渡辺さんの覚え書きシートがあるので読んでみるのもいいだろう。
■ポツンと弾丸がひとつ。実弾をロケットに見立てて先の部分をコックピットに作り替えた作品である。中には小さいながらも宇宙飛行士の姿が見え、飛行旅行への想像を膨らませる。どうかよい旅を。
渡辺英司新作展
2001年2月22日(木)〜3月31日(土)
ケンジタキギャラリー/東京
東京都新宿区西新宿3-18-2-102
(京王新線「初台」より徒歩5分)
12:00〜19:00
日月祝休 入場無料
TEL 03-3378-6051
会場風景
再生の再生—ブタ(尾)と(タブロー)
遅延の飛び込み
怒りのフォトグラファー
後ろの正面
遅延の弾丸
2001-02-22 at 10:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef408cb970b
Listed below are links to weblogs that reference 渡辺英司新作展: